首都圏模試センターのプッシュ<プル戦略(2)学習のソフトパワー=理論と実践
☆だから、結果的なのであるが、自然と上記の図のように、4つの領域をカバーすることになる。
☆上記の図は、生徒がどの領域で学びを行うのかという領域の広さを分類したものである。
☆授業にしてもテストにしても、実践のみならず理論というものがある。AI社会において、実践と理論がセットにならないと、AIによるサポートシステムを構築できない。
☆2020年の大学入試改革がうまくいかないのは、学校現場において実践と理論の両方が目配りされて運営されているわけではないからである。
☆しかも、現場主義という名の実践だけに偏っている。本来、現場主義というのは、現場における実践と理論の検証がセットになっているはずだが、現場中心だと叫ばれる時、体験主義で理論が無視されるという恐ろしい事態が発生する。
☆もちろん、教師の中には、実践と理論の統合をはかっている方もいるが、学校全体でそれを行っているところは、ほとんどない。
☆しかし、文科省の奥の院には、今回の改革及びそれに伴う学習指導要領で、なんとか、学校全体が自己変容できるように仕掛けている。それが、CBTであり、eポートフォリオであり、ルーブリックであり、デジタル教科書である。
☆CBTは今のところとん挫し、eポートフォリオも課題山積、ルーブリックも玉石混合、デジタル教科書は拡大中。しかも公立学校の場合は、モデル校の方法論を制度化してしまうから、実践のノウハウの枠にはめてしまう。ポートフォリオもルーブリックもその背景にある理論はうやむやになり、マニュアルとなる。デジタル教科書は大変便利であるから、ますます、実践と理論の相互検証などはなかなか進まない。
☆それでも、実践とモニタリングがセットになるわけだから、気づかないうちに学校は自己変容することになる。
☆私立学校の場合は、すべては理事長次第である。特に理事長・校長が同一人物の場合、実践と理論の両方を大事にすれば、学内の雰囲気は実にアカデミックになる。そのような学校には、思考コードとかルーブリックが存在するものである。
☆しかし、理事長と校長が別々の人物である場合、理事長が経営にしか関心を示さないと、校長次第ということになる。校長は定年ごとに変わるから、もし新校長のものの見方・考え方に理論的なものに対する関心がない場合、元の木阿弥となる。
☆上記の図で、学校がテストの実践領域をカバーしていないが、それは授業とテストが独立しているわけではないからだ。定期テストは、授業で学んだ範囲の定着度をみたり、進級させるかどうかの材料として活用するので、独立してテストを作成し活用するというわけではない。
☆大手塾・予備校も基本は学校と一見同構造であるが、入試問題の分析が中心だから、相対的に授業とは独立している。授業で学んだことの到達度をみるのではなく、入試問題をクリアするかどうかが問題なのである。
☆そういう意味では、学校の定期テストのような作問方法は、学内で活用できるだけで、汎用性がないから、やはり授業の延長上にしかないが、大手塾・予備校は、授業の実践もテストの実践も、広く外部に開かれていて汎用性がある。
☆しかし、学校と大手塾・予備校の共通点は、あくまで実践であって、理論はないということなのである。
☆だから、模擬試験会社のデータを活用する。大手塾・予備校の場合は、グループ会社やグループ部署がテストセンターを自前で持っている。何万人という受験生の答案を採点処理するために、統計学の理論が活用されている。
☆学校は、それゆえこの外部模試を使わざるを得ず、その分析はテストセンターが作ってくれるから、それを理解できればよく、自ら理論を学び構築する必要はない。
☆ネットワークで得意不得意を互いに補完しあえば、それでよいという考え方もあるが、ソフトパワーは実践の粋を理論化し一般化しなければパワフルにならないから、互いに得意・不得意を補完し合うのは当然であるが、実践と理論を分断することになれば、学校教育でソフトパワーを創発できなくなる。
☆ソフトパワーを創発できない学校では、結局生徒の創造性を養うことは難しい。地頭の良い生徒が独自に成長することはあるが、それは学校の教育によって育つわけではない。
☆結果的に大手塾・予備校が自前でテストセンターを持っているがゆえに、受験技術のソフトパワーを創発することになり、学校が塾の存在をどのように批判しようが、だからといって、どうすることもできない。ソフトパワーを創発できる教師と出会った生徒は、ラッキーということになる。
☆しかしながら、AI社会は、このソフトパワーをシンプルに個人の手に引き渡す。つまり、今後は学校でもやろうと思えば、実践と理論をAIのサポートによって実行できるのである。ICTと思考コード(ルーブリック)があれば、それは可能だし、そうなれば学校全体で取り組むことができる。
☆もちろん、教育領域なので、受験学力を超えて探究活動を射程に入れた学びの実践と理論を運営できる。ここで学びの実践と理論というのは、授業の実践と理論、テストの実践と理論という上記の図でいう4つの象限全部をカバーすることになる。
☆2020年の大学入試改革及びそれに伴う学習指導要領の改訂が、今までになく混乱しているように見えるのは、大手塾・予備校から学校まで、実践だけではなく理論も取り入れ、AIと共生できる体制を作らなければ、ICTでパーソナライズな学びをすでに作り始めているAI個別塾に市場をシフトされてしまうからだ。実際に、水面下でこのようなAI塾が市場規模を拡大しつつある。
☆それゆえ、Z会や河合塾でも、実験的にこの領域に参入できる体制を整えている。そして、この部分は、プッシュ<プル戦略であるプロジェクトで動いている。
☆首都圏模試センターは、自前で学校情報や学習情報の収集分析とデータ化という理論構築=ソフトパワーをコアに、多くの実践者と理論的研究者と緩やかにネットワークを組んで多様なプロジェクトで動いているために、上記の図のように4象限すべてをカバーして、先進性・先見性を発揮している。特に理論的部分は、他のテスト会とは違い、知識・理解領域以外の論理的・批判的・創造的思考領域もカバーしている。他のテスト会は、知識と理解の領域しか理論化できていないから、その差異の分が首都圏模試センターのソフトパワーをパワフルにしている。
☆学校や塾予備校の教務陣と、徹底的に違うところは、首都圏模試センターの情報部署も教務部署も、全員がICTを活用しながら仕事をし、ミーティングの時もICTを個々が操作しながら、データに基づいて戦略を組み立てていけるところである。ミーティングのその場でデータをみながらシミュレーションやプロトタイプを改善していけるから俊敏力が半端じゃない。
☆そして、実践者や理論的研究者とミーティングをするとき、入試情報コード的あるいは思考コード的な発想をmediationとして共有しながら展開していけるから、必要なものを必要な時に必要とする人たちと共有でき、実に小回りが利くのである。
☆この環境がない限り、この人材がいない限り、階層構造組織から脱却することはできない。日本の教育界は、この階層構造を批判する精神を持っている教師もいるが、変容させる理論もICTの技術も不足している。想いだけでは構造は変えられないのだ。
☆首都圏模試センターが受験生や保護者以外に学校や塾予備校に期待されているのは、この小回りの利く学習の実践と理論をシェアできるプッシュ<プル戦略を大いに活用しているからであろう。
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