2019年中学入試の新フレーム(44) 東大1点主義から世界大学ランキング100位以内へ 質の変化。
☆プレジデントオンライン2018/04/04 09:15に、飯田樹氏の記事「東大合格者17人が海外大に進学した理由」という記事が載った。しかし、これは今始まった現象ではなく、これまでもあって、それをリフレクションした記事。だから、渋幕や開成で起きている話だくらいで、中学入試市場もどこか他人事だった。
☆しかし、今春、文化学園大学杉並、富士見丘、聖学院、工学院、かえつ有明などから世界大学ランキング100位以内の海外大学合格者がどんどん出始めた。どうやら、東大1点主義から世界大学ランキング100位以内へという、キャリアデザインの質の変化が起こっている。大学入試における新潮流が大きくウネリ始めたと言えよう。
☆この質の変化は、21世紀に入るや動き始めていて、2020年の大学入試改革とは別路線で動いていたが、2013年以降、2020年大学入試改革のグローバル戦略に重なって一瞬見えなくなっていた。
☆しかし、この改革の速度が遅くなってしまったがために、その逆に加速度的に進む私立学校の21世紀型教育の動きが、再び前面に見えるようになってきた。
☆文科省にしても私立学校にしても、少子化と財政難という共通の超難題にぶち当たっているために、共通している教育の質のアップデートの部分もある。
☆しかし、貿易戦争などの喫緊の経済下降の問題以外に、そもそも米国経済に大きく左右される日本の経済は、中長期的にも明るい兆しがない。
(首都圏模試センター作成)
☆今までは、経済のアップダウンというか経済好循環と悪循環が、バブルを挟んで山谷を繰り返してきた。東京オリンピック・パラリンピックまでは、好循環が続きそうだから、首都圏模試センターの中学受験生の数のこのところの好調さは、シナリオ通りだろう。
☆しかしながら、同センター自身が同じ受験者数増減推移グラフで描いているように、どこかでバブルははじける。
☆そのとき、リーマンショック以降のアベノミクスのように、20世紀型成長神話経済政策で、立ち直れるかどうかはわからない。実際現状でも、経済格差が広がって、20世紀の高度経済成長期のように国民総所得倍増などはあり得ないというのは、体感済みである。
☆すると、別の経済政策が必要なのだが、20世紀経済社会の枠組みそれ自体がアップデートされない限り、どうも回復は難しい。
☆というのも、20世紀経済社会の枠組みは、端的には、どの国が化石燃料の覇権を握るかで争われてきた。現状日本は、この覇権を米国に依存しているわけだが、米国の経済社会も相当不安定である。
☆したがって、エネルギー問題の自己解決というイノベーションを日本は果たさんければならない局面にきている(そして、水面下では進んでいる)。従来の教育制度は、ある意味20世紀経済社会の枠組みを支える知識や技能を教え得てきた。
☆しかし、その枠組み自体を変えない限り、日本の経済社会はもたなくなっている。では誰がそうするのか?それは今の生徒以外においてほかにいない。
☆少子化高齢化でも、化石燃料に依存せず、環境破壊をせず、幸せな国づくりはいかにしたら可能か?共生できる柔らかい精神と高度技術を生み出すことができる創造知以外に何があろうか。
☆そうであるならば、そういう教育を行い、新しい社会づくりの発想、技術を学べる大学に行ける環境をつくるしかない。残念ながら、日本の大学にその期待が持てるところは多いとは言えない。そこで、上記のような私立学校は、そのような大学として海外も射程に入れたのである。
☆東大一点主義は、20世紀経済社会=抑圧的階層構造社会では有効だった。しかし、命より伝統が大事だという認識はおかしいということは、テレビが映しだしてしまった。本人のためと思い、結果的であれ、強制することは、パワハラであるという認定もまた然り。
☆東大一点主義も同構造である。そのような構造から生徒が解放され、自己肯定感を有するには、たとえば世界大学ランキング100位以内を射程に入れれば、その中に日本の大学は東大と京大しかないが、海外に目を向ければあと98校もチャンスがあるのである。
☆それには、英語教育はCEFR基準でC1英語が必要なのである。C1なんてできるはずがない。だいたい東大も大学入学共通テストで不要といっているではないかと伝統を重んじる人は言う。しかし、その東大も医学部の推薦入試にはC1レベルがあると有利に働く。これは、同大学が入試要項で明示していることである。佐賀大や金沢大学の医学部の推薦入試もそうだ。
☆明治150年の今、生徒たちは、150年前の若者がそうだったように、与えられた江戸幕府社会で生きることを捨て、明治社会という新しい社会を作って生きることを選んだ。
☆新しい時代を作ると新たな経済社会が生まれる。新しい雇用が生まれる。その雇用を生み出す新しい基礎学力は新しい教育から生まれる。
☆質の変化とは、新しい枠組みにアップデートする時代がやってきたということなのである。明治維新は、江戸幕府社会をアップデートしたというよりリフォメーションだったと言った方がよいだろうが、今回はアップデートである。
☆市場社会であることは変えないし、市民社会であることも変えない。それでいて格差社会はなくそうというわけだ。近代社会の暗黒面を取り除こうというアップデートである。
☆20世紀型教育をいまここでやるということは、そのアップデートを阻止しようということにつながる。21世紀型教育をパワフルにいまここで実践することは、経済社会のアップデートをすることにつながる。
☆時代を読んでビジョンを高らかに謳うことも、もちろん必要だが、そのビジョンが実現するには、いまここで実践する人材が必要である。現場があまりに目まぐるしく忙しくて、そんな社会全体のことなど意識できないと思っていようとも、21世紀型教育をいまここで実践する教師は、世界を変えることにつながるのである。
☆今、まさにそのような教師がたくさん出現し、日々集中して取り組んでいるのである。世界大学ランキング100位内の大学に挑戦する生徒が、一部の高偏差値高校以外から現れ出でたというのは、そのような極めて重要な質的変化が起きているからだろう。
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