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2019年中学入試の新フレーム(45) 中学入試から大学入試をみるとき、6年後から考える。

☆今春の大学入試は、いわゆる「日東駒専」まで超難化し、首都圏の受験生はかわいそうという声まででている。この現象について、構造的な側面からきっちり分析しているのが、安田 賢治氏(大学通信 常務取締役 情報調査・編集部ゼネラルマネージャー)。
 
 
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今年の一般入試は、昨年と同じく、私立大学の志願者が激増した。前年比で7.2%増え、少子化が進行しているにもかかわらず、12年連続で増加している。国公立大学の志願者は前年比で1.1%減り、7年連続の減少になったのとは、対照的な結果となった。
 
私立大人気の理由は2つ考えられる。1つは文部科学省が地方創生の一環として、大都市圏の大規模大学の入学者を2016年から定員に近づけるよう、漸減させていることだ。大手私立大は入学者を減らすため、一般入試の合格者を減らしている。
 
昨年も私立大は大人気で志願者を増やしたところが多かったが、さらに合格者も減ったことで倍率は大きくアップしていた。倍率は青山学院大学が6.2倍から7.0倍、法政大学は4.2倍から5.4倍、立教大学は4.6倍から5.4倍、早稲田大学は5.6倍から6.7倍へ、立命館大学は2.9倍から3.3倍へと、それぞれ上昇した。
 
(中略)
 
2つめは今年も“文高理低”の学部志望動向となったことだ。文系学部は私立大に多く設置されている。たとえば、経済学部(昼間部)は国公立大学に31校設置されているのに対し、私立大には91校にある。経営学部は国立大では横浜国立大学と神戸大学の2校、公立大をあわせても5校だが、私立大では79校に設置されている。社会学部は国立大の一橋大学にしかないが、私立大には20校に設置されている。今年も社会科学系の学部の人気が高かったが、私立大のほうに数多く設けられていることもあり、志願者増に拍車をかけた。
☆ということだ。つまり、ざっくりまとめると、2020年大学入試改革に向けて、あるいは東京オリンピック・パラリンピックの背景にある地方創生に向け、大学受験の首都圏一極集中を回避する行政政策の結果、大学が定員に近い人数しか合格を出せなくなったということ。要するに、文部科学省が「入学定員管理の厳格化」を行い、一定基準を超過すると補助金が削減される。
 
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☆それから、文科系の学部が、国立大学より私立大学の方が多く、依然として現在の経済社会は、「文高理低」だから、私大に受験生が流れているからだということの2点。
 
☆したがって、早慶に今までなら合格していた受験生が偏差値の幅を広げて併願するから、「日東駒専」まで難化し、小規模大学で教育の質の良い大学までも難化するという連鎖が起きているということだ。
 
☆しかし、これは2019年度までの高3生の話で、それ以降は、少子化が激化し、入学定員管理の厳格化による難化現象は収まるのではないかと、安田氏は見ている。
 
☆そんなことは、大学受験雑誌などで安田氏は語っていないと言われるかもしれない。それは、大学受験雑誌は、いまここで受験する高3生をコアターゲットとしているから、余計な情報を発信していないだけだ。
 
☆一方、安田氏は、首都圏模試センターの模擬試験会場でも講演をするから、そのときは、中学受験生及びその保護者を対象に、6年後の大学入試の話をする。
 
☆すると、少子化によって、難化現象は続かないから、目の前の難化現象を見て不安になり大学附属校を受験する必要はそれほどない。にもかかわらず、現在人気が高くなっているというのは、6年後を見据えると、あまり今の私大難化現象に惑わされる必要はないのではないかと語る。
 
☆詳しくは4月15日に配布される首都圏模試センターの冊子(上記表紙の写真)をご覧いただければと思う。
 
☆6年後は、現状40%のAO入試・推薦入試が、おそらく50%は超えることになるだろう。大学受験は一般入試でなければならないという時代は終わる。
 
☆それから、インダストリー4.0やスマートシティ5.0の時代実感が巷に溢れているだろうから、再び「文低理高」になるだろう。
 
☆ロジカルシンキング、クリティカルシンキング、クリエイティブシンキングを統合するような数学的思考力の重要性とテクノロジーに対する意識が高くなっているはずである。中学入試で、新タイプ入試が増加している本当の理由は、このイノベーティブな学力観の転換を見据えているからでもある。
 
☆ともあれ、世界大学ランキングも500位くらいに日本の私大はかなり努力して入り込むだろうから、海外だけでなく国内の大学も、世界という視野で選択するようになっているだろう。そういう意味でのグローバル高大接続準備教育であって、グローバル=海外ではない。グローバル=世界標準ということなだけである。
 
☆現状の私大難化現象は、国内基準に固執するから起こっているという面もあるだろう。安田氏のように、聞き手が、中学受験生なのか、高校受験生なのか、大学受験生なのかきちんと区別して大学受験情報は語らなければならないというのが、2020年の大学入試改革の過渡期としてしかたがないことである。
 

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