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2019年中学入試の新フレーム(60) 2019年は、学校選択2タイプ

☆先日首都圏模試主催の保護者会で、話したことだが、意外と反響があったので、少し確認したい。2019年のウネリは、革新的流れと不動の保守の壁の衝突になる。
 
☆それは、保護者の価値意識もそうだし、塾の方針もそうだし、学校の教育システムもそうである。どちらがよいかどうかは、わからない。それは私事の自己決定だし、選択判断の問題に過ぎない。
 
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☆革新的流れとは、世界的視野で眺めて、子どもの未来の価値を高められる投資をしようという価値観。未来の価値というのは、もちろん世界を基盤(宇宙船地球号)とする自己陶冶と他者・社会への貢献ができる能力である。
 
☆不動の保守の壁とは、国内の学歴社会=東大一点主義の中で、子どもの未来の勝ち組みポジショニングを取ろうとする価値観。日本丸の中で、それぞれの役割の長となる個人の力を重視する。
 
☆日本の大学も、国内の学歴階層から脱して世界大学ランキングなどで評価される努力をしようとするか、受験応募者数確保を最大の目標とするのかで、やはりここでも、革新的流れと不動の保守の壁の相克がある。
 
☆そして、学校の教師や塾経営者が考えている以上に革新的流れを選ぼうとする保護者は多い。少なくともホンマノオトを読んでくださる方36,000人/月(アクセス数ではなく、ユニークユーザー)は、革新的流れを選択さる方がほとんどだろう。この数字を少ないとみるか多いとみるかは人それぞれだろうが。
 
☆そんな中、革新的流れを選択判断した象徴的な記事がプレジデントオンライン (2018.4.7)に掲載されていた。「元博報堂社員"子育て"を理由にオランダへ 」というタイトルの記事がそれだ。
 
☆このようなリード文から始まる記事だ。
 
人生100年時代、人工知能(AI)の発展、働き方改革、経済のグローバル化など、多様な文脈で「働き方・生き方が過渡期にある」といわれる昨今、“子育て”で頭を悩ます人は少なくない。19年勤めた博報堂を辞め、オランダに移住した吉田和充氏はその1人だ。「良い大学を出て、大手に就職すれば安泰という従来の考えに違和感がある」と語る同氏は、なぜオランダを選んだのか。著書『18時に帰る』で同国の働き方・生き方を紹介した、公益財団法人1moreBaby応援団の秋山開氏が聞いた──。
 
☆大企業のポジショニングを捨てて、子どものためにオランダのイエナプラン教育を選択した吉田さんのような方が多いとは思わないが、かりにオランダに移住しなくても、イエナプランに相当するあるいは近い教育を探そうとしている方は多い。三田国際が3年で、完全に蘇ったというのはその代表例だろう。
 
☆吉田さんは、イエナプランの教育の特徴について、こう語っている。
「8歳だから小学3年生」みたいに杓子定規的に決めるのではなく、個人の能力や性格を見た上で、先生と親、子供の三者で相談して、どの学年のクラスに入るのかを決めました。
 
でも、そのことより驚いた出来事が起きました。入学1ヵ月で、進級したんです。学習の進度はもちろん、「休み時間は誰と遊んでいるのか」「普段、1人で何をしているのか?」などを先生が全て詳細に把握していて、総合的に判断すると進級したほうがいいのではないか、という提案でした。
 
長男と相談の上、「Ja(はい)」と答えましたが、先生に話を聞くと、進級させずに同じ学年をもう一年やり直すこと(留年)も普通にあるのだそうです。
 
☆アメリカでも、同じようなギフテッドというシステムがある。子供一人ひとりの能力を大切にするシステムとしては、日本とは確かに違う。もちろん、日本だって、子ども一人ひとりの能力を大切にする教師はたくさん存在している。
 
☆しかし、それがシステムとしてあるかは別である。親としては、そのような教師を探すことはなかなか難しいが、システムを比較検討することはわりとしやすい。
☆吉田さんが、日本の教育に疑問をもたのは、仕事を通してだったようだ。こう語っている。
 
まだまだ今の日本は良い大学を出て、大手に就職すれば安泰という考え方があります。そして、日本の教育はその前提のもとにある。その結果、僕も含めてですが、組織としての日本の企業の弱さが露呈してきているように感じたんです。前職時代、一流と呼ばれる企業の方々と仕事をしてきたからこそ、余計にこれは危機的だなって。
一例をあげると、決裁のシステムが複雑すぎて、優秀であるはずの社員1人ひとりが思考停止状態になっていると感じています。決裁のために10以上の段階があって、その中で最初に掲げていたはずの方向性を捻じ曲げたり、持っていたはずの信念や意見を見失ったり、「持ち帰って検討します」と言ったまま何もしなかったり……。経済のグローバル化が進む中、このままでは日本企業は危ういんじゃないかって思ったんです。
☆この保守的なキャリア観や大企業の階層構造システムに疑問をもつ革新的な価値観は、そんなに少なくないであろう。
 
☆すなわち、中学入試における学校選択者の中に、このような革新的価値観をもっていて、イエナプランやIBなどを学びながらも、コスパも合わせて考えて、日本の私立中高一貫校を選択するという保護者は、あるスケールに達しているというのは、そう間違っていないだろう。
 
☆2019年7つ以上の中高一貫校が誕生するわけだが、一校を除いて、すべて21世紀型教育という名称を使わないにしても、内容は革新的な21世紀型教育を標榜している。
☆いずれにしても、吉田さんがオランダの教育を日本の教育と比べて次にように語っているが、その点に関しては、21世紀型教育機構や、同機構ほどではないにしても、21世紀型教育を念頭に置いている学校は、実践している。
日本の学校教育は「正しい答えを教える」ことに関してはすごく優れているけれど、「自分の意見を述べる」とか「どういうふうに考えるか」とか「なぜそうなっているのか」ということを教える教育にはなってないな、ということ。一方で、オランダは「自分の意見を述べる」「自分で考える」というところに重きを置いていると感じます。
学校全体で「こうしなさい」というものがほとんどないのは、その良い例です。実際、長男が通う学校の先生にハッキリとこう言われました。「先生は勉強を教える人ではありません」と。では、先生とは何か。「あくまで子供が好きなこと、やりたいと思えることを見つけるお手伝いをする人」だそうです。これはイエナプランに限らず、オランダで見学させてもらったモンテッソーリやダルトンなどの学校でも方向性としては同じだと感じました。
☆しかし、たしかに次の点は決定的に違う。
オランダの場合、学校の運営は別の機関(学校運営会社)が担っているんですね。ですので、先生は事務的な作業をする必要がないんです。だから常に生徒たちに向き合うことができる。ここは大きな特徴だと思いますし、良いところだと僕は感じています。
☆日本の学校も教師も生徒も探究の道に集中できる環境を作ることができたら、リソースはあるのだから、イエナプランに匹敵する十分に質の高い教育を構築できるだろう。
 
☆そして、オランダの大学が、THE2018 世界大学ランキングで、100位内に7大学入っているのだから、日本の教育の革新的な流れは、日本の大学にも勇気と自信を与えることになるだろう。
 
☆ともあれ、歴史的なウネリとして、学歴競争社会で勝ち組になれるかもしれない学校を選ぶか、未来において自分の価値を確実に高められる能力を身ににつけられる学校を選ぶか、2つの学校選択の時代がやってきた。これは、偏差値格差による二極化現象とは違う次元の話である。
 
 

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