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【C軸思考問題】オートポイエーシスと最近接発達領域

☆オートポイエーシス論というか入力出力なしのシステム論を展開している河本英夫さん(東洋大学文学部哲学科教授)の「哲学の練習問題」はおもしろい。以前別名で単行本で出していた本を改題して文庫化したようだ。改題前の本は2007年に出版されていた。もっと早くから読んでいたら良かったと思う。
 
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☆というのは、本書は、首都圏模試センターの「思考コード」でいえば、C軸思考力のトレーニング本であり、私も東大の帰国生入試を受ける生徒のトレーニングとして行っているワークショップと重なるものがたくさんあったからだ。苦労して創意工夫をしなくても、ここにすでにあったではないかと。
 
☆それに、河本さんは、学習と発達を区別しているが、これは、首都圏模試センターの場合、「思考スキル」と「思考コード」に相当する。
 
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☆河本さんは、学習はある範囲における理解を充実させるスキルの獲得であり、発達は、その範囲を超えて発達する能力に関係するのであると。
 
☆つまり、私たちは、思考コードを9つの能力に分類しているのだが、思考スキルは、そのうちの1つの能力を完成させるだけではなく、さらに他の能力に転移することにもつながるという私たちの発想に重なる。
 
☆もちろん、河本さんと話し合ったわけでないから、こんな簡単に置き換えることができるかどうかわからないが、思考コードと思考スキルの学習×発達の考え方が、認知科学や脳科学など河本さんの研究領域から乖離しているものではないことが了解できたのは、本書との出会いを通しての収穫だ。
 
☆ただし、河本さんは、思考スキルと思考のコツをわけているわけではない。むしろ、コツは能力の発達に必ずしもつながらないとしている。
 
☆これはどういうことかというと、思考スキルをある1つの能力で使うだけだと、それはコツとか解法のテクニックとなって、他の能力に転移しないととらえることができる。
 
☆だから、そのコツを、能力発達の転移のエンジンとしての思考スキルに転換する必要がある。そうすることによって、首都圏模試センターの考える学びによって発達する能力を支える要素として思考スキルを扱うことができる。
 
☆つまり、思考コードにおける9つの能力領域を縦横無尽に転移しながら成長するには、思考スキルを普遍化していくことが大切のあのである。
 
☆その普遍化のためのトレーニングで活用するトリガーが、エッシャーの絵だったり、バックミンスター・フラーのフラードームだったり、トルソーの復元だったり、フラクタルだったり、トポロジーだったり、カオスだったり・・・・・・・。
 
☆これらは、私もワークショップで活用するものである。
 
☆しかし、何より驚いたのは、河本さんがヴィゴツキーの「最近接発達領域」について言及して最終章を閉じていることだ。オートポイエーシスは、結局能力のかなたの可能性へむかって一歩踏み出すその足場を教師と生徒が協力して発見するということなわけであり、そこで教師がインプットして生徒が思考してアウトプットするいうモデルではなく、教師と生徒が協力し合うところまでも見越している拡張システムなのである。
 
☆主体性とか自律というのは、このようなオートポイエーシスによって可能なのである。生徒というのは閉じられた脳神経系や内分泌システムではなく、外とのコミュニケーション循環と脳神経及び内分泌の循環がつながっている状況態をいうのであろう。
 
☆この自然と社会と精神と身体のトータルな循環がC軸思考システムということであり、A軸システムは、まだ脳神経内での循環しか考慮していない能力であり、B軸思考は、内分泌システムまで循環し始めている能力ということだろう。つまり、A軸思考とB軸思考は、外界と内面をまだ分断している。
 
☆ところが、C軸思考は、外界と内面の境界線を超えて循環しているということだろう。そしてそれが人間関係のみならず、社会のシステムや自然のシステムにまでネットワークが拡大して循環するまでに成長していくのである。
 
☆成長とは、この循環の環を拡大していることと置き換えられるかもしれない。

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