【思考力】首都圏模試センターの教務陣の挑戦②体験と意識&視点と知のネットワーク
☆そして、それぞれの軸を単純→複雑→変容という3つのレベルに分けている。それゆえ、A1A2A3・B1B2B3・C1C2C3という9つの思考領域がある。
☆だから、単純に知識を覚えて引き出す力と思考力を鍛えなさいというメッセージではなく、たとえば、B1思考力をテコにA1思考をサポートしようとかいうメッセージが伝わる仕掛けになっている。
☆もちろん、直接そのようなメッセージが、解答解説集≪BREAK≫に書かれているわけではない。解答解説には、各問の頭に「B1」「比較」「理由・根拠」というように、書かれている。つまり、思考コードと思考スキルが刻印されている。
☆これを手掛かりに、自分自身の学びの方法をつくってほしいというのが、同センターのねらいである。
☆たとえば、4月15日実施の6年の社会科の大問1は、貿易に関する問題であるが、問1は、ドルに対する円の価値がグラフになっていて、縦軸のメモリに円を表記していく問題。
☆正答率は、13.0%だった。
☆問2は、日本の産業が、アジアで現地生産するようになった理由を回答する問題だが、正答率は、76.7%だった。
☆思考コードは問1同様、B1で、思考スキルも問2の方が少し複雑だ。しかし、問1の方が正答率は相当高かった。
☆しかし、解説は、考え方を示しているのであって、受験生はそんな考え方をして解答しているのではなく、条件反射的に解答しているから、このような差異がでたと考えられる。
☆問1では、すでに問題文の中に手がかり足がかりがあるから、なぜこのようなメモリになるのかは、暗記してそれを想起できなくても、解けるのである。
☆しかし、知らないからと、考えることをせずに、次に進んだ生徒が多かった可能性がある。
☆一方、問2は、20世紀末の日本の産業構造とアジアの産業構造を比較して、その違いを根拠に考えていくのだが、労働力の賃金が安いというフレーズを暗記していて、貿易関係の問題では、よく出てくるという体験をしているので、すぐに想起できる状態になっていたのだろう。
☆体験(といっても、ここでは新聞やニュースでよく見聞きするという体験だが)を通して、産業構造の違いや市場の利益の生まれ方をネットワーク化する意識や視点=思考スキルを介していないので、丸暗記になっている可能性がある。
☆それを裏付けるのが、問3である。この問いは「A1」「想起」なのだが、正答率は38.7%である。これは、問2の労働賃金の問題をネットワー化していれば、その思考スキルを使えば、何を想起すればよいのかわかるはず。つまり、問2と問3は関連問題だ。
☆これは、問いというのを単発にとらえているし、知識同士のネットワーク化をしていないために、あるいは、普段から、ネットワーク化しようというB軸思考を働かせている生徒が40%弱しかいないということを示している。
☆受験戦略的には、この40%弱の生徒と同じように、知識同士のネットワーク化をするB軸思考を鍛えることが成功のカギを握るということがすぐにわかるだろう。
☆さて、A1A2A3・B1B2B3・C1C2C3ごとの正答率が、C軸に進む程難しくなるとは限らないのは、問いの設定条件もあるからなのである。
☆たとえば、問1は完全解答である。完全解答になると正答率は半減する。かりにそうだとしても、今回の問1で気づくことは、グラフの軸の意味は、普段から意識することが重要であるということが、改めてわかるわけである。この時期の受験生は、まだグラフを理解する意識や視点が自覚されていないということだろう。
☆逆に言えば、グラフを丁寧に読むトレーニングは、意識や視点=思考スキルを鍛えることになる。
☆とにも、体験-思考スキル(意識・視点)-知のネットワーク化をどの領域でトレーニングするかで、思考力の成長を促すことができるのではないかという首都圏模試センターの仮説の検証への挑戦は、一生懸命問題を解いて頑張っているのに成長実感をまだ感じ取れていない生徒にとっては、次のステージにジャンプするきっかけになると思う。
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