2019年中学入試の新フレーム(83) AERAdot.中学入試を俯瞰し見通す。
☆記事はこう始まる。
ここ数年右肩上がりに伸び続けている中学受験率が、今年もアップした。大学付属校人気や、21世紀型教育を標榜する学校の人気は継続中。いわゆる2科(国語・算数)・4科(国語・算数・理科・社会)の入試ではなく、適性検査型、思考力型などと呼ばれる新しいタイプの入試も増えて、多様化が進んでいる。
☆AERAが、英語教育だけではなく、もっと幅広く新しいウネリをキャッチし始めた。多くのメディアで、新しい英語教育とかアクティブラーニングに紐ひもづいた思考力などについて、それぞれを単品で語ることは、最近のメディアの流れであるが、統合的にあるいは俯瞰して論じようとしているのは、他のメディアと比較して、一日の長がある。
☆特に、首都圏中学模試センター教務情報部長の北一成さんとサピックス小学部教育情報センター本部長の広野雅明さんのインタビュー記事を掲載させているのは、非常に分かりやすい全体感を表現している。
☆というのも、北氏は塾歴解放区の旗手であり、広野氏は塾歴社会の旗手であるからだ。中学入試市場は、この塾歴解放区と塾歴社会の葛藤が弁証法的統一を生み出そうとしているから、活況を帯びている可能性がある。
☆しかも、この葛藤は特殊中学入試の現象のように見えるが、実は、明治150年のパラダイム転換期を迎えた2018年だからこそ生まれているエポックメイキングな葛藤なのである。
☆私学啓蒙思想vs官僚社会進化論(私学の系譜vs官学の系譜)の明治以来続いている価値意識の葛藤。これについては、随所で述べている、ここではこれ以上論じないが。
☆とはいえ、柔らかく、北氏と広野氏のインタビューを掲載しているから、受験生や保護者にはもしかしたら、その葛藤は気づかれないかもしれない。
☆首都圏中学模試センター教務情報部長の北一成氏のインタビューやそれに基づいて、次のような箇所がズームアップされている。
「過去3年間の増加数は450人程度でしたが、今年は850人と増え幅が大きくなっています。首都圏模試では、今年の受験生数は4万5000人とみています」受験生が増えた背景には、景気の回復に加え、20年から始まる大学入試改革の影響が大きいという。「明治以来の大きな改革と言われている20年からの大学入試改革により、日本の教育が大きく変わろうとしています。今後は入試の多様化が進み、知識の積み重ねだけではなく、ますます思考力、表現力が求められるようになります」
☆一方、サピックス小学部教育情報センター本部長の広野雅明氏のインタビューやそれに基づいて、次のような箇所がズームアップされている。
「付属校は大学受験対策に力を入れる必要がないので、教養教育やアクティブラーニングなどに多くの時間を費やすことができます。また大学受験を気にせず、適切なタイミングでの留学も可能です。さらに大学の充実した施設設備が使用できたり、大学のアカデミックな授業を中高生が受講できるなど、高大連携教育のメリットもあります」「人気が高い学校は、優秀なネイティブ教員によるオールイングリッシュの授業を行ったり、帰国生も大勢受け入れている。保護者は、教育の内容をきちんと見て学校を選択しています」
☆これだけ読むと、北氏は新しい価値の転換を語り、広野氏は人気の傾向について語っているというシンプルな違いなのだが、価値の転換は塾歴解放区から生まれ、人気の傾向はあくまで塾歴社会内の学校の話とそれぞれのものの見方と考え方のフレームをかぶせると背景の含む違いが明快になる。
☆つまり、塾歴解放区は、大学改革入試改革が、いわゆる学歴社会も解放する突破口を生み出している可能性があると北氏は考えているし、広野氏は、学歴社会や塾歴社会が崩れることは当面ない。その秩序の中で、人気を維持したり、下克上を起こす学校はあるだろうと。
☆まっ、深読みは誤読に通じますよと言われるかもしれない。しかしながら、次のような箇所は、他の一般メディアが、今まで注目してこなかった内容だ。
別学校の共学化も引き続き進んでいる。今年は文化学園大杉並、八雲学園、青山学院横浜英和が女子校から共学化した。青山学院横浜英和は、青山学院大の系属校になったことで人気がアップしている。以前に比べて男子生徒の英語教育に対する関心が高まっているが、八雲学園は米国のサンタバーバラに「八雲レジデンス」という独自の施設を持ち、海外研修を行って現地の高校生と交流するなど、生きた英語を学ぶことができる。また文化学園大杉並には、日本とカナダ両方の高校卒業資格が取得できる「ダブルディプロマコース」がある。このような国際教育が、保護者や受験生に評価されている。
☆八雲学園は、さらにラウンドスクエア、文杉は世界大学ランキング100位以内の大学に多数合格という情報が加わると、他のメディアも一斉に注目しだすだろうが、そこは、この時期まだ寸止めにしているのだろうが、最新の情報を一はやく盛り込んでいる。
☆また、公立中高一貫校の新しい動きにも触れている。
公立中高一貫校は、1都3県(東京、神奈川、埼玉、千葉)の募集2680人に対して応募者は1万6000人にのぼり、平均競争率が6倍超の高止まりが続いている。最近では私立中との併願者が多く、私立と公立の垣根が低くなっている。入試で実施される適性検査は、大学入試改革の先駆けと評価されており、「たとえ不合格でもいずれは大学入試につながるため、勉強したことが無駄にはならない」とする塾関係者も多い。
☆そして、この箇所と先に紹介した北氏の思考力に関する話を読み重ねるとおもしろい価値の転換が中学入試市場で生まれていることに気づく。
☆それは、中学入試の準備という学びの質の転換である。12歳の合格から18歳の未来創造へという学ぶことの意義のパラダイムシフトが起きているということではないだろうか。
☆あなたは、18歳になったときどんな景色を見ていますか?その新しいワクワクするような景色をイメージできる学校を選択していますかと。
☆多くの先進諸国では、18歳で大統領を選ぶことができる。2022年から、日本も18歳で成人になる可能性が見えてきた。明治150年の今年、この判断は、大人の概念を変える大きな転換である。
☆「転換期」。2018年のキーワードである。
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