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2019年中学入試の新フレーム(86) 開成ショックはしばらく続く。

☆前回のアクセスランキングで10位以内に今も入っている記事「2018年首都圏中学入試(55) 開成 国語で思考力入試問題。」が象徴しているように、メディアの表現を借りれば「開成ショック」は、しばらく続くだろう。しばらくとはどれくらいか?2020年までは続くと思う。
 
Kaisei
 
 
 
 
☆今春、国語入試問題に、適性検査型風というかPISA型風というか、思考力型問題が出題された。今までもずっと思考力を要する問題は出されていたが、それは文章の枠内でほとんど処理できる論理的思考の問題だった。
 
☆今回のは、スタイルもいわゆる今までの中学入試問題とは違うタイプにわざわざして出題し、微妙ではあるが、文章の枠内だけでは判断できないクリティカルシンキングを持ち出す問題を出題した。
 
☆ちょっとした遊びともいえるし、新しい流れを無視しているわけではないから安心してというメッセージだったのかもしれないし、それとも何かから脱却したいというメッセージだったのかもしれない。が、それは知る由もない。
 
☆しかし、この間朝日新聞で、柳澤校長が「英語入試」について「検討」していると語っていたのだから、新しい流れを無視しているわけではない程度のメッセージと受けとめるのが妥当かもしれない。
 
☆ただ、問題は新しい流れをどこで感じているのかだ。21世紀型教育の流れを感じて学内で検討しているとはとても思えない。ではどこで感じているのだろう。
 
☆開成と言えば、東大合格者数ナンバー1だが、在校生の50%未満の話である。開成当局にとっては、それ以外の生徒の動向についても気になるというのが教育の発想だろう。つまり、半数以上が、実は塾歴社会に属していないし、あえて解放されたいと思って、積極的に東大以外を選ぶ生徒もいるのである。
 
☆そういう意味では、早稲田や慶応などが、新タイプ入試を強化していくという動きに敏感にならざるを得ないし、海外の大学志望者もでてきたのであるから、日本の大学入試以外の制度に目配りしないわけにもいかない。
 
☆そんな中、2019年中学入試において、慶応湘南藤沢が英語入試を実施するわけである。もはや偏差値の低い学校が英語入試を設定していると安穏としてもいられない。東大をはじめとする国立大学の医学部でも、推薦入試などで、C1英語を要求してくる時代でもある。
 
☆そして、海外大学志望者の出現である。もちろん、そのような流れを開成当局がつくたっということもあるし、世界で活躍するOB講演会が頻繁に行われているからその影響もあるだろうし、ポスト安倍ともいわれている岸田氏の外務大臣時代の活躍ぶりもある。しかも岸田氏は早稲田大学出身。
 
☆また現代の魔法使いと呼ばれグローバルな視野で大活躍している落合陽一氏の存在もああるだろう。氏は筑波大出身である。やはり、開成/開成学園という図式が成り立っているのかもしれない。塾歴社会開成と真のエリート開成学園が同居しているのかもしれない。真のエリート開成学園出身の私学の先生も知っているが、実に高邁な精神の持ち主で勇敢な私学人である。
 
☆それはともかく、今回の海外大学選択が実に面白い。8名合格となっているが、おそらく実人数は3名くらいだろう。これは全くの私の独断と偏見による推測だが。
 
☆Deanカレッジのように、有名なリベラルアーツ大学であり、アイビーリーグに編入しやすい大学を選択している生徒もいるし、同じリベラルアーツ大学でも、ウェズリアンのようにリトルスリーにはいる超難関リベラルアーツ大学を選んだ生徒もいる。
 
☆アイビーリーグのイエール大学や州立大学の名門UCLAを選んだ生徒もいる。
 
☆リベラルアーツを選んだ生徒は、他のリベラルアーツにもアプリケーションを出しただろうが、重要なのはその選び方だ。
 
☆ハバフォードやミドルベリーはリトル・アイヴィーで、名門。その中でもウェズリアンはリトルスリーというわけだが、実は、米国の大学のポジショニングは、アイビーやリベラルアーツ版アイビーのように目立つところだけが優位なわけではない。
 
☆グリンネルのようにシリコンバレー創設に大いに貢献した人材を輩出して有名なリベラルアーツ大学のように、ヒドン・アイビーというクラスがあるのである。
 
☆アイビー級の総合大学、アイビー級のリベラルアーツ大学、ヒドン・アイビーのリベラルアーツ大学やスタンフォードのような総合大学のどれかを選択したであろうということが了解できる結果になっている。これが今年の開成の海外大学選択の特色である。
 
☆つまり、開成は、このことを学校として意識し始めている可能性がある。2020年大学入試改革は、実は学歴社会をこのような形で崩していく可能性がある。というのも、入試制度だけを欧米に適合させていくということは不可能で、入試-授業ー組織というのは、密接に関係するのであるから。
 
☆今世界大学ランキング1100位くらいまで、日本の大学は89校入っている。仮に200位くらまでをアイビークラスとし、500位くらいまでをリトルアイビーにしたとしよう。すると、500位以降は、偏差値順の発想ではなく、ヒドン・アイビークラスというメタファーでとらえるようなウネリを創ることが可能なのである。
 
☆塾歴社会というのは所詮現象である。私学は創設者が亡くなってもその精神は継承されるが、民間組織は、なかなかそうはならない。つまり、塾歴社会はそういう意味で現象であり、長続きしない。新たな動きをする若い塾が盛り上がってくる。それは塾でないかもしれないし。
 
☆開成は、市場の大きな変化に動揺しないように(するはずもないのが、リスクマネジメントして念のため)、開成学園を貫徹するにはいかにしたら可能かについて、学内で静かに議論しているに違いない。これらの議論は、2020年までは確実に続くから、その議論の中で、タイミングを見て、なんらかのメッセージを出す戦略は実行していくということになろう。
 
☆ゆえに、開成ショックは2020年までは続くだろう。そして、中学入試においても、リトル御三家とヒドン御三家(21世紀型教育校)は、今までのような偏差値階層構造から新たなポジショニングを形成するようになるだろう。
 
☆そのポジショニングは、国内外の世界大学ランキング1100位までの大学進学実績の絵柄に拠って決まることになるだろう。
 
☆そのとき、中学入試における学校選択指標は、大学合格実績によってほとんどが決まるのである。エッ!今まで言っていたことと違うじゃないかと言われるかもしれない。現象としては同じであるが、偏差値という単一指標で選ばれてきた大学合格実績の話と、多様な研究の違いを認識して選択される大学合格実績の話とでは、まったく意味が違うのである。

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