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2019年中学入試の新フレーム(92) 文京学院大学女子 学びの生態系広がる。

☆文京学院大学女子(以降「文京女子」)の中高一貫部の校長水上茂先生、広報部の先生方とお会いする機会があった。校舎は大名庭園六義園に隣接していて、その地は近代日本を形成した先人らが集った縁の空間である。
 
☆創設者島田依史子が、今では想像もつかない奮闘努力をして女性のための学校を創った当時の歴史が蘇ってくるのだが、実はそれは、伝統と革新を見事に融合した現代の文京女子の教育ポジションがあるから、そこから眺めて感慨深い思いが溢れてくるからなのである。
 
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☆「伝統と革新の融合」というのは、学びが機械モデルではなく、有機体モデル、すなわち学びの生態系という好循環が学内に広がり、コミュニティ、グローバルエリアとの連携が外部にも豊かに展開されているということを示唆している。
 
☆しかしながら、有機体モデルは、ネットワークが複雑系である。機械モデルのようにツリー構造でわかりやすくできているわけではない。それゆえ、わかりやすさを求める受験業界において、同校の真価が正当に伝わっているかどうかは、わからない。
 
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☆日本の文化資産という切り口で見れば、豊島岡女子や山脇となんら引けを取らない。SGHアソシエートプログラムとSSHプログラムを結ぶ言語は英語であるから、英語の教育という観点からも、やはり豊島岡女子や山脇と比べて、むしろそれ以上の環境がある。
 
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☆そして、SGHアソシエートの文科省の提示した条件の中には、プロジェクト学習を行うことになっているから、いわゆるアクティブラーニングは、学内に根づいている。ディスカッションは、今やサイエンスコミュニケーションでは当たり前だから、SSHプログラムでも同じように展開しているだろう。
 
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☆つまり、ディスカッションや対話という、知識のネットワーク形成、ロジカルシンキング、クリティカル&クリエイティブシンキングが醸成される環境にあるのである。
 
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☆このアクティブラーニングとしての新しい学びについても、豊島岡女子や山脇に比べて、引けを取らないどころか優れている可能性がある。
 
☆ということは、大学進学実績の違いが大きいのか?いや、すでに韓国やアイルランドの海外大学に進学し始めている。SSHやSGHのプログラムを通して、多様な研究機関や海外の学校とコラボしながら、自分が何を研究していくことで、世界に貢献できるのかという自分軸を内面に打ち建てるから、そのような進路が自然と開かれるのである。
 
☆2020年の大学入試改革によってグローバル進路が展開するようになるから、そのとき真っ先に文京女子は優位なポジショニングを勝ち取ることになろう。
 
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☆そして、何よりも、文京女子のキャンパスが、学びの生態系を生徒にアフォーダンスという心理学的サポートをするのである。
 
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☆茶室的な教養回路が身につく空間だったり、サイエンス的発想が刺激されるスペースが巧まれている。
 
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☆しかも、今後の第4次産業革命に伴う、グローバルな規模で展開されているとされているクリエイティブシティ化(スマートシティ5.0)にとって、極めて重要な発想の転換を生み出す空間。
 
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☆たとえば、正面玄関の前に、リアルな樹木と抽象的な木を見立てた彫刻が意図的に配置されている。具体と抽象の反転というアートの視点こそ、見えないものを見える化する発想の転換を生み出す。そこから、新たなつながりが生徒一人ひとりにも学校にも生まれ、学びの生態系は豊かになっていく。
 
☆その学びの生態系の学校としての新たな展開の象徴が、スポーツサイエンスコースの存在である。先に述べた世界は都市化されるという話は、実はクリエイティブで快適な生活ができるデザインが必要である一方で、人間の心と体のケアが極めて重要になってくる。マインドフルネスが流行っているのも、その前兆である。
 
☆都市生活の中で、SSHやSGHのチャレンジは、知の生態系を広げていくことにつながるが、それだけでは、人間と都市の成長は難しい。人間の身体と精神の好循環とも結びつく必要がある。これは、かつてのように体育学ではカバーできない時代がやってきている。
 
☆スポーツ医学、スポーツ心理学(メンタルケアやメンタルトレーニング)、スポーツ社会学、スポーツ工学など、知と自然と社会と身体と心が有機的に好循環する都市工学が必要とされている。
 
☆つまり、子どもたちの未来をデザインする土台がどこよりもはやく設置されているのである。その先見の明に改めて驚愕である。
 
☆しかし、小さき森は、市場が自ら守ろうとしなければ、機械モデルに簡単に壊されてしまう。子どもたちの未来のために、みんなで支えていかねばならない学校の1つとして、文京学院大学女子の存在価値を大切にしたいものである。

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