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2019年中学入試の新フレーム(99) 文化学園大学杉並 DDコースの本物のアクティブラーニング型授業

☆文化学園大学杉並(以降「文杉」)は、4年前からダブルディプロマコース(DDコース)を開設。これは、わが国初のカナダ・ブリティッシュコロンビア州(以降「BC州」)公認の海外学校で、「文化杉並カナディアンインターナショナルスクール」という名称で、文杉内にコースとして溶け込んでいる。
 
☆日本の学校でもそうであるが、当然人事異動はある。今年4月から、文化杉並カナディアンインターナショナルスクールの校長として、リヨ・ホイットニー先生が就任された。大事なことは、他校のように募集するのではなく、BC州が人事権を行使してくれるのである。
 
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(校長リヨ・ホイットニー先生は、オーセンティックな学習を生徒と共に創りあげる情熱的な教師。「情熱」は教師の最も重要な資質であると。しかし、これは、学習理論のエビデンスリサーチによって裏付けられているから重要であると語っているのであり、経験だけからの話ではない。)
 
このDDコースが注目されていることが、AERAで取り上げられてたことについては、すでにホンマノオトでご紹介したが、今後ますます注目されることになろう。というのは、文杉は文科省によって、研究開発校に指定されていて、BC州のカリキュラムや英語教育、そしてそこで展開している本物のオーセンティックなアクティブラーニングを、日本の教育に広く浸透させるモデルづくりをすることになっている。
 
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☆ちょうど、今春から共学校になったので、より公教育への影響力も増していくだろう。
 
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(アリッサ・クロチェンスキ先生によるDDコース高1のサイエンスの授業シーン。)
 
☆そして、何よりまず初めに、文杉内全体にその影響が広まっている。中学のDD準備コースの人数もどんどん増えているし、中高一貫コースの英語教育もオーセンティックなアクティブラーニングが実施されている。
 
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☆DDコースの提携についてリサーチにリサーチを重ね、さらにBC州と交渉に交渉を重ねて、想像を絶するコーディネート業務に奮闘努力して成功に導いた青井教頭は、文杉のためのみならず、日本の教育を変えるミッションを自ら引き受けていたからできたのだと。
 
☆そして、13名の一期生が、大学に羽ばたいときに、はやくも世界大学ランキング100位内の海外大学(医学部も含まれる!)に進んだことに大いに手ごたえを感じ、ご自身の努力が実っていることに心静かに喜びを感じているようだった。
 
☆というのも、世界の名門校への準備には、創造的思考、批判的思考、社会的能力などコア・コンピテンスを身に着けていなければ合格できないため、このような大学への準備教育が、日本のように受験勉強という大切なものを切り捨てて受験勉強に専念する人間力育成観点からみると偏ってしまう現状を打破する一助になる実感を抱いたからだという。
 
☆DDコースの授業を、リヨ・ホイットニー校長と青井教頭といっしょに見学させていただいたが、目の前に本物のオーセンティックなアクティブラーニングが展開していて、教師及び生徒の一挙手一投足に、学習の理論が裏づけられている解説に(もちろん質問しなければ聞くことはできないわけだし、青井教頭の通訳がなければそれもできないわけだが)、感動した。
 
☆たとえば、グループワークが3人だったり4人だったりするのに、モチベーション、メタ認知、アントレプレナーシップなど関係総体が埋め込まれているというのを聞いて、自分がまだまだ甘いことに思い知らされた。
 
☆最適な授業では、5人以上のグループワークはほとんどやらないというのには、学習理論の裏付けがあったのである。
 
☆授業の中で教師が投げる問いも、コア・コンピテンシー別に巧まれている。日本の問いは知識と理解を促す問いばかりであり、問いのストラクチャーをデザインしたほうがよいかもしれないという議論にもなり、実にスリリングだった。
 
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☆教えない教師というのは、あり得るのかという質問をしてみたら、すぐにあり得ると。しかし、その前提として、足場づくりと学び全体のストラクチャーがデザインされていないとカオスになりがちであると。
 
☆そのようなコンピテンシーベースの学習理論はどこから来ているのかと尋ねると、ピアジェやブルームなどはもちろんだけれど、今はBC州ではジョン・ハッティに影響を受けている。エビデンスの観点があるからと回答が返ってきた。
 
☆カナダ、とりわけBCやオンタリオは、学校制度のソフトウェアとハードウェアの話ばかりではなく、教師と授業と生徒と評価のストラクチャーの研究が進んでいて、それを学校で校長がリーダーシップを発揮して実現している。
 
☆生徒の内面にソフトパワーを生み出すコンピテンシーこそがイノベーションなのだとリヨ・ホイットニー校長は語る。校長が実践者であり、同時に研究者であり、さらに経営者である。
 
☆本物の教育について、まったくフラットに権威主義的な雰囲気がまったくなく対話ができる。文杉はほんとうにグローバルシチズンシップを育成する学校づくりをしているのだと感銘を受けた。
 
☆いずれ、21世紀型教育機構のサイトで、授業の様子や学習理論についてもう少し具体的にレポートするのでお待ちいただきたい。
 

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