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【C軸思考問題】いきつくところは「人間とは何か?」

☆東大の帰国生対象の入試問題は、IBやAレベルテスト、オックスブリッジの問いなど、世界標準の問いをリサーチして、意識して出題しているのだろう。実におもしろい。今年の理Ⅱの問題は次の通り。
 
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☆小論形式だから、条件がいっぱいつくのかもしれないが、オックスフォード大学の口頭試問だとこうなる。
 
カタツムリに意識はあるでしょうか?
 
☆なんてシンプル。これは小論形式か口頭試問かの違いによって、条件設定が違うというコトだろうか?それもあるだろうが、オックスフォードの場合は、条件も自分で設定しなさいということだろう。
 
☆今春の理Ⅰの問題は次の通り。
 
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☆これが、やはり口頭試問だが、ケンブリッジだとこうなる。
火星人に人間をどう説明しますか?
☆東大の方が、かなり限定的だし、紫外線についての知識に引きずられる。しかし、上記の4つの問いは、結局は「人間とは何か?」について洞察力や創造的思考力をフルに活用する問いである。
 
☆中高の授業では、カタツムリを素材にすることもあるだろうし、宇宙の星々を素材にするときもあるだろうが、いきつく先は、人間とは何か?などのビッグクエスチョンとなるだろうか?ここにジャンプする授業になっているだろうか?
 
☆もちろん、授業中に、今勉強している知識は、いずれ人間とは何か?という究極の問題につながると語ってもしかたがない話で、身近な素材や目の前の素材を学ぶプログラムの中にそこに飛ぶ仕掛けがあるかどうかが重要なのである。
 
☆その仕掛けとは、論文編集指導の際の「対話」にある。書く行為と対話というリアリスティックフィードバックあるいはリアリスティックリフレクション。つまりポートフォリオも大事なのだが、その過程であるプロセスフォリオにこそ仕掛けがある。
☆だから、授業スタイルや授業パターンなどいくらリサーチしても、そこにはあまり得るものがない。たいてい、教授法にばかり目がいき、教師と生徒、生徒どうしの間で、どんな対話が行われているか気にかけられない。
 
☆ポートフォリオは、学びの成長証明であはある。しかし、一方、プロセスフォリオは成長エナジーである。
 
☆ポートフォリオにばかり目がいくと、インプット→思考→アウトプットという機械モデルの学びが横行し、ここに操作される主体性や自立が生まれていることに気づかない。
 
☆もっとも、プロセスフォリオは、実のところ可視化されてはいない。まだブラックボックスである。eポートフォリオとプロセスフォリオは全く別次元の話で、ポートフォリオだけが前面に出てしまうと、主体性や自立性は、操り人形を見ているような教育になっていく危険性がある。
 
☆まあ、批判していてもしかたがないから、人間とは何か?の答えが、過去の体験のリニアな歴史編纂によって支配される危険性があるということを、生徒自身がクリティカルシンキングを働かせるしかない。そして、ここを意識してポートフォリオを書けばよいのである。歴史はたしかに物語制作であるが、時間順序で体験の一部をつないでもおもしろくないのだと。思い切りおもしろい物語を創作しようよと。
 
☆すると、その瞬間、道徳の怪物が頭をもたげてくるのが判明するだろう。そのとき、君はヤマタノオロチと賢く闘うスサノオノミコトのごとく立ち臨めばよいのだよ。ニーチェの超人のごとく怪物と闘っても、もちろんよい。
 
☆それにしても、神話には、なぜか怪物が登場し、ヒーローが現れる。これも一つの呪縛かもしれない。いまだに、人間とは何か?汝自身を知れという問いは、未規定。ここを判断するのは、やはり自分。
 
☆オックスブリッジの対話は、ここのレベルから始められるかどうか?規定を求めるのではなく、未規定の泉を手に入れられるかどうか?
 
☆これがオックスブリッジと日本の大学の真の教育格差なのかもしれない。未規定を規定しては壊す創造的破壊のマインドと未規定を恐れ規定路線で固める思考停止のマインド。
 
☆東大は、このことを実によく知っていて、帰国生や推薦入試でやってくる受験生に創造的破壊のマインドを期待し、一般入試では蓋をするわけである。日本の近代国家を創る人材と作る人材というように微差異で2つに分けてきた伝統を、現代化したというのが本当のところかもしれない。
 
☆その知の格差を生む伝統の象徴が東京駅の赤レンガと復刻された三菱一号館である。興味のある方は歴史を紐解いてみてほしい。明治150年の光と影の交錯したマテリアルであり、とても私の手には負えない深さと広さがそこにはある。
 

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