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2019年中学入試の新フレーム(153) 静岡聖光学院 ソフトパワー全開(了)

★今月9日(土)に、静岡聖光学院の説明会・体験授業に参加して、いろいろな気づきを頂いた。1つは変わらないものと変わるものの関係。私立学校は、変わらないものは変えず、変わるべきものは変えるというフレーズはよく使う。
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★そして、この伝統と革新の関係は、ともすると、伝統は形だけのものになり、革新的な部分だけが独り歩きしだすということもよくあることだ。
★しかし、学校長岡村壽夫先生は、伝統はイノベーションに拠って生かされるのだというような趣旨のことを静かに語られた。伝統なきイノベーションもないが、イノベーションなき伝統もないという伝統と革新の濃密な相互関係を明快に語ったのである。
★人間を細胞レベルの観点から見れば、新陳代謝でどんどん入れ替わる細胞と脳や心臓のように入れ替わらない細胞もある。しかし、その両タイプの細胞があって、人間は生きる力を発揮できる。そのような人間の成長をサポートする教育であれば、なるほど伝統と革新の両方が機能してはじめて、学校は生徒の成長を促進できる。
★静岡聖光学院は、そのような丁寧な教育デザインをしているのである。これは、今後の私立学校の在り方をリサーチするときに実に有効な視点である。
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★このような学校長の教育コンセプトの話の後に、副校長の星野明宏先生、小山祥史先生(進路指導部・ICT整備推進委員長)とスピーチが続いた。星野先生は静岡聖光学院の生徒がいかにジェントルマンとして全人的な成長を遂げるかについて語った。
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★小山先生は、学力の成長のサポートによって、生徒1人ひとりの自己実現の一環として進路をいかに実現するかについて語った。
★この2つの内容の要も、いわば精神的成長と学力の成長の両方が統合されているということである。しかも、その両方をつなぐために、教師と生徒が共有している教育目標の「羅針盤」を静岡聖光学院では可視化している。それが静岡聖光学院「思考コード」である。
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★星野先生の語る成長曲線も、小山先生の語る進路指導の3段階ステージも、この思考コードに基づいている。
★しかし、単純にA軸→B軸→C軸という階段を一歩一歩あがっていくような進み方ではない。それは、説明会同時開催の体験授業を見学してすぐに気づいた。受験生対象のその体験授業がスリリングなのは、A軸とB軸、C軸がぐるぐるループを描いているからである。
★つまり、同校の成長は、このA軸、B軸、C軸が渦を巻いているのである。ただし、学年に応じて、その渦をつくっている軸の比率が違っているのであろう。
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(静岡聖光学院の説明会に参加してイメージした生徒の成長図。小さな渦が大きな竜巻を生み出すようになるのが、静岡聖光学院の生徒の成長のイメージだと感じた。)
★それに、ABCの渦巻きだから、生徒によって、どこからスタートするかは違ってくるし、どこからスタートしてもよいわけだ。一人ひとりの才能を生かし、同時に「ジェントルマン」 「アカデミック」「向き合う」という静岡聖光学院の不変的な精神を豊かにしていける教育の綿密な設計がなされている。
★教育のこの内在的なシステムは、一般には、なかなか見ることができない。何をやっているかは見えるが、その一つひとつの教育活動がどのようにつながっているのかその設計図を見ることは、なかなか難しい。というよりも、意外と意識されていない。
★しかし、それでは、その学校の教育力によって成長するのか、生徒がもともともっていたもので育つのかはわからない。もし生徒によるとしたら、伸びる生徒は伸びるが伸びない生徒は伸びないままだ。
★学校選択において、どの生徒も個性を発揮しながら大きく成長する教育の設計図が描かれていることは大切であり、それが静岡聖光学院のように可視化されて説明されるということは重要なことではあるまいか。

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