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2019年中学入試の新フレーム(157) 東洋大学京北 哲学的思考力×数学的思考力

★東洋大学京北中学高等学校(以降「東洋大学京北」と表記)の広報部長井出秀己先生から2019年度の入試日程とその変更点についてお知らせがあった。算数一科目入試が流行る中、思考力と算数の問題をカップリングした時代に最も適合した入試を編み出したという。
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★4科2科選択の一般入試以外に、論述型+算数(4回目の算数と同一問題)という「哲学的思考力×数学的思考力」を実施する。
★入試の種類のネーミングは、受験生や塾関係者にわかりやすいように、表現しているが、日本の思想と欧米の思想を統合させようとした同校創設者井上円了の哲学方法論をベースにしてきた東洋大学京北の想いが込められている。
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★端的に、あるいは本質的に表現すれば、「哲学的×数学的思考力入試」ということだろう。この東洋思想と欧米思想を融合する発想というのは、妖怪博士井上円了の発想の肝であり、欧米哲学を超える世界が必要としている発想である。
★たとえば、IBのTOKなどは、東洋哲学は、思想であって哲学ではないから、カリキュラムの中から排除しているという。マズローも五段階欲求説を超える六段階目に、仏教的発想があるのだが、論文の中にはそのことはいれない。
★シリコンバレーでトレンドの発想としてZENに影響されたマインドフルネスがある。やはり東洋的な発想の影響がある。
★これは独断と偏見だが、カントが物自体といって不可知の部分を設定して以来、憶測や主観を排除して客観的な知を優先してきた伝統が欧米の哲学にはある。
★しかし、井上円了は、その物自体の領域を、異界として考察する発想をしたのであろう。日常と非日常をいまここで気づく発想、同一性と異質性の両方を受け入れる寛容性、自分たちの文化と異文化の両方の理解など、実はものごとの両義性を受け入れる哲学的発想こそ21世紀は重要になってくることだろう。
★そして、その両義性の差異を可視化することで、曖昧性を記号化に変換できる。曖昧性は、排除するのではなくて、可視化してクリアにすることが、実は互いを理解するコミュニケーションを初めて生み出す。
★会議の途中で紛糾してしまうのは、同じ言葉で違うことを言っていたり、違う言葉で同じことを言っていたりという曖昧性が引き起こすことが多い。ホワイトボードで整理をしながら可視化していくと視界が晴れやかになるということは多いだろう。
★意外とホワイトボードのない会議室で、不毛な議論が続いているケースは多いのである。
★やはり、記号化され可視化されることで、理解者を広めることができる。この記号化や可視化のときに必要なのが、数学的思考であり、客観的な領域のみならず、主観的な領域も記号化できることによって、実はAIの活用領域が一気に増えるのである。
★今まで、AIはロボットの延長上に考えられてきたが、今後はAIは人間の精神の延長上で活躍できるようになるだろう。実は私たちは、まだまだ精神という自分にとって異界の領域はあまりにも未知の部分が多すぎる。
★それゆえ、不安やネガティブなファンタジーにストレスを感じながら生きている。事件につながることも少なくない。この異界の部分を明らかにしようという井上円了の哲学は、AI時代の今こそ必要なのであろう。
★もっとも未知だからこそポジティブな挑戦心やわくわく躍動する気持ちがわいてくるということもあるが、それが明らかになってしまうと、なにかクールな雰囲気が広がってしまい、それはそれで問題になるかもしれない。
★ともあれ、建学者井上円了の精神が、入試問題にまで染み通っているのが東洋大学京北であり、それは21世紀の時代を生きる子どもたちの希望である。

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