« 【学校選択×学力モニタリング】(01)幻想払拭 | トップページ | 【学校選択×学力モニタリング】(03)60以上の中学受験生と »

【学校選択×学力モニタリング】(02)中学受験生・保護者と

★ときどき中学受験生とその家族の方々が訪れる。1時間くらい、「学校選択」と「学力モニタリング」をセットで対話する。入試問題はその学校のカリキュラムポリシーがわかるから、受験生が問題にいかにアプローチするかは、そのアプローチの方法と学校のカリキュラムポリシーがマッチしているかどうか考えるきっかけになる。
Photo_2
★だから、対話をするときには、使用しているテキスト、受験した模擬試験の成績表と自己答案を持ってきてもらう。5年生と6年生では、対話のスタートが違うので、ここでは6年生とその保護者の方々との対話の例で話してみよう。
★最初会ったときは、「久しぶり、元気だったあ?」と聞いてみる。「はい」と快活にたいていは回答してくれる。お母さんは、「元気なんですけど、成績が・・・:」となる。お父さんは様子を観察している。
★「成績って、どんな感じ?」と聞くと、お母さんが先に応える場合と、だれが先に応えるか待つ場合がある。どちらでもいいけれど、後者だったら、生徒に振り直す。すると、「〇〇の教科が調子悪い」とか回答する。
★「自己モニタリングできてるね」と。モニタリングはバラエティ番組などでもよく活用されているし、アスリートもよくやっていることだから、小6だと、リフレクションとか振り返りとかいうより、ピンとくるようだ。
★「で、どのくらい調子わるいの?」と再度聞き直すと、偏差値50代の生徒は、黙ってしまう。偏差値60を超えてくると、正当率がどのくらいの問題ができるできないという話になる。ここでは、偏差値50前後の生徒の話をまずしよう。
★「成績表を見て、各教科の偏差値の前回との変化をちょっと説明してみてよ」と語りかけると、ちゃんと差を出して変化の事実を語ってくれる。
★「わかっているね。ところで、第一志望の学校の80%確率で合格する偏差値はどうなっているの?」と聞くと、少し躊躇する。お母さんが、「今は、まだ怖いので見ようとしないようにしています」と。なるほど、それはそうだ。
★「大丈夫、私がいるから、怖くないですよ」と。あまり根拠がないけれど、大丈夫といって、抵抗されることはあまりない。受験生は、ここに書いてあると教えてくれる。「成績表という事実をリサーチできることが、実は今回の社会科の問題と同じなんだよ」と返す。
★本人は、社会科の地図やグラフをみて解答する問題ができなかったから、私の言葉が難しいかどうかではなく、ピンときたようだった。とにかく、問題を解くことであろうと、対話をすることであろう、思考の過程は同じであることをリンクさせながら話していくことにしている。
★本人の偏差値とのギャップを改めて認識してもらう前に、「ところで、偏差値5あげるのに、各教科何問くらい解けるようになればよいの?」と聞くと、「10個かな」と即答してくれる。
★「ウアー、そりゃあ果てしないね」と笑いながら、「2個だよ」と返す。「エ~」と生徒のみならず、ご両親も共鳴音を発する。そして、お父さんの表情が柔らくなる。
★そこで、「現状の偏差値ギャップはどう?」と聞くと、「8くらいあります」と。「ああ、でもなんとかなりそうだね」と返すと。ご両親は、前のめりになってくる。
★はっきりいって、そんなもんですかと言いたそうな雰囲気になる。「まあ、そこが難しいんだけどね」とほほ笑むと、そうですよねえという雰囲気が空間に広がる。
★そこで、具体的に教科別に見ていく。教科によって得意不得意があるから、得意な教科から分析をいっしょにしていく。「偏差値としては、どのくらいギャップがあるの」。「5です」と即答。
★2種類の模擬テストの答案を持ってきているから、「両方の自分の答案みて、どの問題なら解ける可能性があるの?」と聞いてみる。すると、「計算と一行題の問題なら、あと2問はできる」と。「いいねえ。でも、かなりその分野はもうできているよね。両方の模擬試験共通してそこはきちんとできているだろう。ということは、このくらいは、今はミスの範囲内ということでよいのかもしれないね。だいいち、これらの問題は考えることはできるんだろう?」と尋ねると、「はい、そうです」と。
★そのとき、思考コードを出す。「これらの問題は、このコードでは、どこの領域?」と聞くと、「A1かな」と。「そうそう、それでいいんだよ。A1、A2とか、今はその違いは易しいか難しかくらいで、要するにA軸問題と呼んでおこうか」と。
★今度は、正答率一覧を見て、30%前後くらいで、間違っている問題を再度解き直してみる。ご両親にも考えてもらう。そして、ホワイトボードで、説明をしてもらう。
★最初は小さな図や小さな数字で書いているから、「おじさんは年寄りだから視力がよわくなっているから、大きく書いてみて」と根拠があるようなないようなアドバイスをすると、描き直してすてきな図や式になっている。「すばらしい。で、どことどこがポイントなの?」と説明を促すと、問題では書き込まれていないいくつかの条件を見つけることができて、そうなると説明しているうちに解決していく。
★「ということだね」というと、「でも時間がなくて、このような問題はやらないようにしている」とポロっと。「ああ、よかった!そこだね。そこに次のジャンプがみえるよね」と。キッチンタイマーの使い方を説明していると、お父さんが「時間の問題と応用問題の(1)ができるようにれば、〇〇ちゃんはいけるよ。そうですよね」と。「おっしゃるとおりですね」と。
Photo_3
★そこで、「ところで、その(1)は思考コードではどこの問題?」と聞くと、「Bですね」と。「そうそう、ここでもB1、B2の違いはあまり気にしないで、B軸問題としようか」。
★首都圏模試の成績表には、一問一答コードが付加されてあるし、解答解説にもそうなっている。「暗号だと思って、そんなふうに考えていませんでした」と。
★「暗号とはいいねえ。もう一つの模擬試験は、思考コードがないけれど、見ればわかるかな?」というと、どちらも同じようにアプローチしていたということもあり、「はい、わかります」と。
★そして、今度は、第一志望の学校の入試問題は、どこまでの思考コードの範囲をカバーしておけばよいか分析するとよいのだが、まだはやいから、A軸B軸問題、特にA1A2B1くらいに気を配っておこうかということになった。
★今度は、他の3教科を同じように分析していくのだが、もうA軸問題については、大丈夫です、自分でできますとはっきり言い始めたので、「じゃあ、このB1の問題を、ホワイトボードで説明してよ」と。
★書くときに何と何が比較されているかはっきりさせてみようねと何回か描き直しているうちに、「あっ」ということに気づいて、「比較・対照」とか「対比」の視点が、すべての教科で重要だという気づきが生まれた。
★また、分類整理(カテゴライズ)のスキルは理科の化学や生物分野でも、物語、説明文の分析でも必要になる。理科のテキストで、水溶液の性質の分類整理した表はどこに書いてあるかページを教えて?と聞くと、探すことはできた。
★だから、わかっているわけだ。ただ、それをアウトプットするときに、そのページに何が書いてあったか記憶の引き出しをそこに求めるより、自分の身体から引き出した方が確実なので、ホワイトボードでテキストを見ないで書いてプレゼンできるようにしておくようにと。
★自宅にはホワイトボードがあるとお父さん。そこで、「こんな感じで家でもやってみてください」と。
お願いした。
★今回の受験生は、4月から7月にかけて、戦略的なアプローチをするようにはなってきている。そこに思考コード的な意識、つまりA軸問題とB軸問題と明快に分ける意識(知識と応用だとすべて知識の延長で解決しようとしがち)を持ちながら、「比較・対照」というスキルを明快に認識しながら課題をリサーチする構えをつくれば、次のステップが見えてくる。
★今回は、さらに「時間」スキルの意識が加わった。「抽象と具体」のスキルはすでに持っているが、「具体的」なものがたくさん出てきたり、同じ内容をいろいろ「抽象的」に表現する文章がでてきたとき、突破できない。これは、国語の場合に、多くの受験生にとっても共通の壁だ。
★これを突破するには「言い換え」「置き換え」スキルを磨くことであるが、このセルフモニタリングは、大人でも難しい。表現が違えば、内容もつい違うと誤ってしまうことは多々ある。多くの誤解はそこから生まている。
★この「置き換え」スキルは、算数の場合はプロセスのショートカット思考で大いに力を発揮するスキルで、実はスキルの中でもスペードのエース級なのである。
★これについては、対話の中で問い返しながらトレーニングしていくことが重要である。個別指導が必要になるのは、実はここの部分であることがほとんどである。
★いずれにしても、受験は塾に丸投げではなく、今回お会いしたご家族のように、豊かな対話に発展する機会にできるのならば、幸せではないだろうか。
★秋は、志望校の入試問題分析と本人の思考アプローチのマッチングや軌道修正、思考スキルの中で「置き換え」スキルのトレーニング、そうした中で、併願校というリスクマネジメントの対話になっていくことだろう。

|

« 【学校選択×学力モニタリング】(01)幻想払拭 | トップページ | 【学校選択×学力モニタリング】(03)60以上の中学受験生と »

創造的対話」カテゴリの記事