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【学校選択×学力モニタリング】(03)60以上の中学受験生と

★前回は偏差値50前後の受験生と保護者との対話だったが、今回は60以上の受験生との対話。不思議なことに、このような受験生の多くは、お母さんは、私のところに連れてくるだけという場合が多い。お母さんは「私はもうついていけないので、息子にまかせています」という感じ。みんながみんなそうではないが、わざわざ私と話してみようというのだから、そんな感じだろう。
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(偏差値レンジ60以上の生徒は、ライトブルーの領域は自分で解決済み。それ以上をどこまで攻略するかが対話のテーマとなる。そのチャンレジ部分が赤線で囲んだ領域。)
★このレンジの受験生はざっくりと、「はみだし型」と「きっちり型」の2タイプがいる。実は模擬試験では、このタイプは見わけがつかない。というのも、模擬試験は、A1からB3までのA軸思考とB軸思考の問いしかカバーしていないから。
★かといって、2科4科の入試問題を使えばわかるかというと、そうはいかない。やはりA軸思考とB軸思考しかカバーしていない問題がほとんどだからである。
★ただ、麻布の入試問題と桜蔭の国語の入試問題を素材に授業を行ったときに、その片鱗が見える。また、エッシャーの絵やトポロジーの話、デュシャンの泉の話、ジョン・ケージの話をすれば、それもわかる。しかし、授業だと一部の生徒が嬉々とするものをやるのはあまり得策ではないから、どうしても対話のときに限ってそういう話は多くなる。
★対話によって、どちらのタイプか了解しようとするのが、だいたいいつものことである。本人は、いまのところ明かしてはいない。決めつけられたと思われてもしかたがないから。
★ともあれ、A軸問題とB軸問題しか、いわゆる2科4科では出題されないから、きっちり型の優等生は、それ以上やろうとしない。どうしてかと聞くと、「合理的に作戦はたてるんですよ。出ないものはやらないし、正答率が低すぎるものは捨てちゃいます」と。
★たしかに、それで合格する可能性は高いが、その捨てるという判断がミスマッチになるときがある。偏差値的には高いのに、麻布と浅野のうち浅野しか合格できなかった受験生も過去にいたから、念のため、その捨て具合につて対話する。
★すると、C軸思考の可能性がみあたらない場合がある。こんなに極端な生徒はいないと思うだろうが、そこは鎧がバシンバシンバシンと出てくる感じなのだ。ないわけではなく、奥深く眠っている。だからやたらと合理的という大人の言葉を使って、そこには触れないようにするみたいだ。
★無理やりこじ開ける必要はないし、中高に進んでいろいろな体験をしたり、影響をうける友人に出会ったら心開くときもあろう。諦めるのではなく、壊すことはしない。オープンマインドとかいって、無責任に鎧を壊してしまうケースも最近では多いが、鎧は必要な時もあるのだ。それもその生徒の個性である。
★せいぜいリスクマネジメントとして、あるいは挑戦者としてのポジショニングは、君の志望している学校は必要ではないかと対話をしかけてみる。
★リスクマネジメントとしては、B3に挑戦するのはよいかもしれないと反応するが、志の話はピンとこない。
★そんなとき、ふと成績表をみながら、たくさん志望者がいるけれど、中学受験生全体に注目するのではなく、この志望者集団に注目すると、ここが君にとって大事なグループなんだよね。こうしてテストで受けているから、顔はみたことはないだろうけど、この中に未来の友人が確実にいるよねと話しかけたとき、急にトーンがかわった受験生がいた。どんな生徒なんですか?と。それは僕にもわからないよ。でも今はライバルだねと返すと、どういう点で、僕より優れている生徒がいるのですかと?
★少なくとも君の学びのアプローチとは違うだろうねと。彼は繰り上がりで麻布に入った。聖光学院、浅野にはすんなりはいったけれど、C軸思考はまだ開発されていない。ただ、むやみに自分で勝手に捨てることを合理的だとは判断しなくなった。
★さて、もう一つのタイプであるはみだし型の受験生は、対話していてただただおもしろい。正答率が低かろうが高かろうが、正答率が0でない限り、自分はできなかったのに、できたやつがどこかにいると思うと、捨てることはできない。解決できるようにするんだと思うんですと。成績表の数字をみて、そんな想像力を広げるなんて、驚きだ。
★こういう生徒は、もはや放っておいたほうがよい。授業中は、そういう生徒がいる場合は、ファシリテーターを頼む。うんそこだよねと教えないでやるのは、私なんかよりはるかに巧い。
★若い先生方とワークショップをやるとき、よく途中からファシリテーターを代わってもらうのと、何ら変わらない構造だ。
★ファシリテーターって、C軸思考のスキルが必要。5月に工学院の生徒3人があるワークショップでファシリテーターを引き受けてくれたが、彼らの普段の授業がPBL型で対話がベースだから、C軸思考が養われているのだろう。
★よくA軸思考やB軸思考でファシリテーターを行っているケースをみるが、予定調和でブレイクスルーするのは難しそうだ。だったら、レクチャーでやっていいんじゃないかと思うぐらいだ。
★さてさて、その受験生がいつどうやってC軸思考を身に着けたのかどうかは、わからない。ただ、彼は、対話の最後に、ボソッと、「難しいだけの問題はつまらないです。一見易しい問題の中に、気づきをもらう問題が好きです」言った。なんということだ。感動した。

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