2019年中学入試の新フレーム(166) 麻布の近況 新教養主義とHLABつながるか。
★「麻布の近況」を開くと、「HLAB座談会」というトピックが記載されている。 このHLABという団体について、同団体サイトでは、≪HLABの「H」は、「学寮生活を中心としたリベラル・アーツ教育」というHLABのコンセプトから、人的交流の「Hub(ハブ)」となる「House(寮) 」を意味しています。元々は「HCJI-LAB Summer School of Liberal Arts 2011」として始まった名残でも有ります。また「LAB」は、「Liberal Arts beyond Borders」(ボーダーを越えるリベラル・アーツ)の頭文字です≫とある。
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(写真は、麻布のサイトから。ディスカッションの光景は麻布らしさにぴったり。)
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★HLABのリーダーは、小林亮介氏。氏は桐朋卒業後、ハーバード大学に進学、そして卒業。大学時代から、ハーバード大学をはじめとする世界の大学生を巻き込んで、日本の高校生と語り合うサマーキャンプを始めた。
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★寮生活とリベラルアーツをコアコンセプトとしたこの活動は、小林氏が、ハーバード大学で経験したエッセンスが反映しているだろうし、この活動を通じて、普遍化していったのだろう。
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★当時小林氏は、ドメスティックな高校の進路指導では、優れた才能をもった多くの高校生の視野や思考を限定的にしていて、もったいないということに強烈に気づいたのだと思う。
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★長野オリンピックの時から何かと尖がっている小布施町と連携していた時から、私は注目していた。HLABの活動はその後も広がり、今では、あの一般財団法人柳井正財団とコラボし、年間最高額700万円強の奨学金の支援をし、海外大学への道を経済的にもサポートするまでになっている。凄いなあ!
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★そして、その間、このHLAB主催のサマーキャンプに参加してきた全国の高校生の中から、HALB運営サポータが現れたわけである。当然、知的かつ政治的動物的な動きに高感度なセンサーをもっている麻布の生徒も参加していただろうし、大学に進学した段階で運営サポートに参加する麻布OBもでてきた。
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★そんなわけで、「本校OBが運営に携わっているHLABの学生さんに、大学生活や進路について話してもらう機会がありました。参加した生徒たちは身近なロールモデルからいろいろと刺激を受けたようです」(麻布のサイトから)ということになったのであろう。
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★同サイトには詳しい記述はないが、幾枚かの写真から、熱心に議論している様子が伝わってくる。土曜日の新教養主義としての講座がパワフルに展開している麻布のマインドとどこかシンクロするところがあるのだろう。しかし、一方で何とも興味深いフレーズが記載されている。
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★それは「HLABに応募する生徒は出るか? 」というフレーズである。ああ、麻布らしいと思わずニンマリ。
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★このHLABの活動は、おそらく2020年大学入試改革や学習指導要領改訂、そして今回の経産省の提言である「50センチ革命×越境×思考錯誤」などのコンセプトに少なからず影響を与えている。
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★麻布のOBも参加しているぐらいだから、おそらくそれはそうなのだろう。しかし、麻布当局は、リベラルアーツや寮生活のようなマインドは、多様な形態や活動があってよく、それを選択するのは麻布生の自由意志であるということだろう。
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★開成のように、海外大学へどんどん進学しよういうムードは作らない。いろいろな進路があってよいし、その多様な進路をサポートする外部団体のどれを選ぶかも自由でよいというスタンスだ。実際、米国の名門大学アイビーリーグに進学している麻布生を知っているが、独自にその道を拓いている。
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★同校の進路実績にその生徒の進学先である海外大学名がないのは、実は高2の段階で海外の高校に進学するコースを開拓しているからである。本人は麻布の卒業生だと今でも自負している。あくまで、自分の生きたい大学に最短で進むために、高2の段階で飛び出ただけなのである。
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★かくして、麻布のような学校こそ重要な役割を果たすのだ。たしかに今までの学校はドメスティックな進路指導だったかもしれない。しかし、今は21世紀型教育の時代である。多くの学校で、多様なキャリアデザインを志向する機会を用意するようになったのも一方で事実である。
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★だからHLABのような活動機会も学校内できちんと内作している。もちろん、学校ですべてできるわけではないから、外部団体とコラボレーションはする。
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★ただし、学校内でコンセプトとか方向性とか内製できる力が大切である。それがあって、外部団体との連携である。ところが、担当者レベルと外部団体が個別につながるために、外部団体の選択肢からコンセプトや意志をもって選んでいるわけではなく、別の力が働いている場合が意外と多い。
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★担当者レベルと強烈につながり、学全体校の理念を崩している団体もある。そうなってしまっている学校は、実は生徒が集まっていない場合が多い。
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★そんなわけで、HALBのような団体がますます重要になってくるわけだが、麻布のように、外部団体のコンセプトをリスペクトし、理解しながらも、選ぶのは生徒であるというスタンスがとても大切である。
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★これによって、外部団体は市場の原理が働く。学校が、コンペを募る場合もある。このコンペがプログラムの質できちんと行われる場合もあるし、価格競争になる場合もある。
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★質の競争と量の競争の差異を認識できる教養のある学校。多様な機会をメタ的に認識できる見識のある学校。麻布は、ある歴史的事件以降、この点において優れたロールモデルになったのである。
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