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2019年中学入試の新フレーム(171) 静岡聖光学院 世界一入りたい寮(1)

★近代始まって以来、世界のジェントルマンとしてのエリートは、常にグローバルな舞台に立たされてきた。そして、共通してその育成の場は、イートン・カレッジがモデルであるように、寮制学校なのである。
★21世紀は、グローバルな舞台が、すべての市民に解放されたというのが、もしかしたら本当のところで、そうであれば、なおさら、国を超えて最適なジェントルマンとしてのエリート教育を実施している学校はどこかリサーチされることになる。いやすでにそうなっている。
★こうなってくると、再び寮制学校は世界から注目される。その大学版が、ミネルバ大学で、中高にも同様の波が押し寄せてくるだろう。そして、そんなことを見据えて、6年前に寮の改革を行い、寮が満杯状態になり、寮が人気の学校がある。静岡聖光学院がその学校である。
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★ちょうど夕食時に寮に訪れたが、静岡聖光学院の寮の特色について、高2の塚田くんがナビゲートしてくれた。
「静岡聖光学院の寮と言えば、リーダーシップをぼくたち先輩が後輩に伝えていくシステムがあるということです。高1、高2は、中1、中2といっしょに暮らします。もちろん、全員ではないですが、寮に誇りを持っていたり、中1のころに同じように先輩に励まされ、苦労を乗り越えることができたという経験を後輩にも伝えたいと思っていたりしている先輩方が、名乗りをあげます。
部屋は2人部屋か4人部屋ですから、中1、中2の生徒といっしょの部屋で暮らします。リーダーシップというのは、強引に目標に向かって引っ張っていく感じではないですね。むしろ、いっしょに生活して、耳を傾けたり、様子を見たりしながら、相手のことをまず理解しようというところから始まります。
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風呂もいっしょに入りますから、24時間本当に共に生活しています。人によって違いますが、心を開くようになることが、つまり、心の壁がなくなることが、まずは第一歩です。オープンになれば、勉強のこともイベントのことも、自分の好きなことも、イベントのアイデアも語り合うことができるわけですから、コミュニケーションが十分にとれるようになります。
そこから先は、やりたいことも、やりたくないことも、自由に話しても、誰にも否定されないから、のびのびできます。これが成長につながるし、そのサポートができる機会がリーダーシップをつくるのだと思っています。
とにかく、考え方や感じ方が、まったく違うので、先輩後輩にかかわりなく、新しい発見や気づきがあって、楽しいですよ。多様性というのは、外国にいかなければ得られないというものではないと感じています。もちろん、将来海外にはいきたいと思っていますが。」
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★なめらかに、そして、具体的なエピソードを交えながら説明してくれるので、感動してしまうが、そんなしっかりとした、今まさに求められているようなリーダーシップを発揮していたら、後輩や先生方からも期待されて、アスリートでよくあるように、プレッシャーやストレスはマックスにならないのと思わず心配になって尋ねてみた。
「もちろん、あります。僕もはじめからこんな感じではなく、心だってはじめから開いていたわけではなく、悩むことだって当然あります。高1になって、リーダーシップを発揮しようとしていたときに、各方面からいろいろなことを頼まれて、容量オーバーしてしまったときは、本当に困りました。そんなとき、ハウスマスターの渥美先生に相談をしました。たぶん他ではありえないと思いますが、夜中の2時に耐えられなくなって、先生を呼んだんです。おそらく、今僕が後輩にそうしているのと同じようなコミュニケーションの方法を渥美先生はとってくれたのだと思います。頑張るというのが壁になっていたので、できないものはできないと素直に言うことができるようになりました」と。
★もっとも、それでもたくさん仕事をしてくれているんですけどねと渥美先生は、塚田くんの語りに耳を傾けながら、笑みをたたえながら語ってくれた。
★かなり、イメージの違う寮生活に、驚きと感動がいりまじったが、渥美先生によると、6年前から今の島田寮部長が就任してから、急激に変わったという。
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(左から塚田くん、榊原先生、渥美先生。2人の先生も実はOBである。自分たちの時代の学校や寮の善きところとこうして欲しかったと思うところがあり、塚田くんをはじめ多くの生徒といっしょに継承すべきところは継承し、変えるべきところを変えていきたいと熱く語り合う。)
★規律と自律/自立のバランスが自由を最適化するのが今寮で起こっていることだという。それゆえ、寮は満杯で、静岡市に住んでいるにもかかわらず、寮に入りたいという生徒がいるぐらいだという。
★中1のときに規律と自律/自立のバランスをとれるようにするのだが、生徒1人ひとりそのバランス感覚が違う。だから一律同じバランスを保つようには指導しないという。コミュニケーションを通して、互いに認め合うことができる状況を大切にしている。
★その状況は、生徒1人ひとり刻一刻と変わるのが、中1の特徴だから、高1、高2の生徒がリーダーシップを発揮するシステムは、確かに最適化を持続可能にするのだろう。
★どこの学校の寮も、どうしても規律が重たくなる。それが寮の堅いイメージにつながっているのだが、静岡聖光学院の寮は、柔らかい。それいて、規律はきちんとある。
★今、静岡聖光学院は、寮制学校イートン・カレッジと交流を開始した。ハロー校やマレー・カレッジとも始まる。
★そのとき、世界一入りたい寮のある学校という評判がSNSに乗って拡散することだろう。

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