入試問題

08中学入試問題とPISA[08] JGのテキストは二元論

☆JGの問題も、記述式の問いが多くなりました。問題量も多いし、記述量も多いので、情報処理速度と情報圧縮速度と想像速度を相当速めなければなりません。そのためか、素材文であるテキストは、3題とも共通点があります。

☆どれもリアルとイメージの対比で、その統合はなく、リアル重視あるいは両者の境界をはっきり示す二元論的テキストです。一般的にはバランス感覚が働いている文章が選ばれるのですが、豊かなリアル、愛に満ちたリアルを重視するテキストが選ばれるわけです。

☆思考訓練としてはシャープでやりやすいけれど、現実生活では妥協点を見出すのが普通ですから、実に心が痛むテキストが選択されています。しかしまたこれは、JGのプロテスタンティズムそのものの理念で、貫徹ぶりに感服。

☆JGの卒業生の生き方も、真理に向かってまっしぐらな人が多いし、教師もそうですね。なんといっても朝の礼拝のスピーチがそういう厳しい内容です。あれもこれもではないし、あれでもないこれでもないでももちろんなく、あれかこれかはっきりしなさいというものです。

☆あついのかつめたいのかどっちかはっきりしなさい。なまぬるいのなら吐き出してしまいますよとは、しかし、聖書の言葉そのものなんですね。あまりにストイックで、私は臆してしまいますが、21世紀の女性のリーダーシップには肝要かもしれません。

08jg ☆さて、OECD/PISAの読解リテラシーのカテゴリーやレベルに基づいて分析してみましょう。御三家の中では、問い自体は非常にバランスのとれたデザインがされています。レベル6の問題もあり、やはりPISAのレベルを超えています。

08jg_2 ☆合格者の平均は、意外と難しいですね。67.1%ぐらいでしょうか。細部も読まねばならないし、全体も把握し、想像もしなければなりません。知識の問題もさりげないけれど、微妙な意味を問うものまであります。速度と総合的な思考力のトレーニングが欠かせません。

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08中学入試問題とPISA[07] 海城のテストデザインは緻密 

08 ☆今年の海城の国語の中学入試問題(一回)は、いつもながら、緻密にテストデザインがなされています。選択肢の問題でありながら、情報を正確に取り出しているかどうかを問う真偽問題でとどまることなく、テキストを解釈する問題は当然ながら、テキストを熟考・評価する問題まで出題しています。

08_2 ☆考えるレベルも、情報を確認、整理するだけではなく、論理的につなぐ作業や批判的かつ創造的に思考するレベルまで問いかけています。受験生が世界標準の読解リテラシーのレベルをすでに乗り越えているかどうかがわかるようになっています。

☆PISAの読解リテラシー分析でシミュレーションすると、合格者の全体平均正答率は61.1%です。選択形式の問題が多いので、実際は、もう少し易しめかもしれません。

☆素材文である物語とエッセイのテキストの選択は、いつもながら本当にすばらしいですね。物語は登場人物の置かれた社会的背景が非常に複雑なのですが、まさに現代の小学生のおかれているあまりにリアルな状況を映し出したストーリーです。海城学園が大事にしている公正としての正義を受験生は受けとめなければならないのですが、そういうところまでよく考えられていますね。

☆エッセイのほうも、関係性としての命がテーマです。人は一人では生きていけないから協力し合って生きていこうという程度の関係性ではないんですね。どうしようもない運命的な関係性の重さから、純粋に生まれた瞬間にさかのぼればさかのぼるほど逃れられない存在の事実に気づいていくというようなエッセイです。「関係性」の厚みを小学生の段階でどこまで整理しておかねばならないのでしょうか。

☆単純に読解方法論を学ぶだけではもったいないテキストです。物語の方は、小学校5年生までの間にじっくり読んでおくとよいのではないでしょうか。著者と作品を紹介しておきます。

熊谷達也著 「七夕しぐれ」光文社(2006年10月) 定価1,600円+税

(入試で出題された箇所は、326ページある大著の最後の部分です。小学校5年生までは、入試問題でクライマックスを読んでしまうことになる前に読みたいものですね。)

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08中学入試問題とPISA[06] 駒東の国語の素材は衝撃的

08 ☆今年の駒場東邦は相変わらず長文の物語を読解する問題。受験生はまず15ページもの長さの物語を読まねばなりません。そして基本的な問いから最終的には創造的思考力を要する問いまで、読解リテラシーの多角的な視点を持っているかどうかが試されます。

08_2 ☆合格者の平均正答率は70%弱になるでしょうが、素材文そのものの中身は小6の男子生徒にはショッキングだったかもしれません。リアルな問題といえばリアルなのですが、なぜ入学試験でこのような素材が選択されたのか、いずれヒアリングのチャンスをと思っています。

☆71年生まれの長江優子さんの「タイドプール」という作品から出題されました。この71年生まれというのは、中学受験を経験している世代が活躍している世代でもあります。長江さん自身が経験しているかどうかわかりませんが、この作品の中でも塾に通うシーンは日常風景として出てきていたと思います。主人公は女の子。自分の母親も、おばあちゃんもガンという病気にかかっているし、自分の母親が死んだ後、家庭に入ってきた新しい母親、つまり継母との最初の葛藤とそれを乗り越えていく過程が書かれています。

☆世界の問題が、家庭の中にまで入ってきているわけですね。もはや世界や社会の問題を考えるのに、時事問題やニュースにアンテナを立てておく必要がなくなったかのようです。家庭の崩壊と新生、病気と死。舞台は簡単に日本から海外にシフトしたりもする。家族という世界と地球規模の世界の問題性が共通していることが、この世代の作家の作品の特徴です。

☆団塊・断層世代までは、中学ぐらいまではまだ大人がふんばって、世界規模の問題が家庭に入らないように、自分たちが防波堤になっているストーリーが多かったような気がしますが、最近の物語は、家庭の中に世界規模の問題が簡単に入り込んでいるという意味でのリアリティが強烈なイメージを結びます。

☆女性が描いた女の子の物語だから、男子校の受験生は、逆に冷静に読解できるのかもしれませんが、感受性の豊かな生徒はどう感じたでしょうか。もっとも駒東の文章の選択の傾向に慣れているから、そんなことはありえないのかもしれません。

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08中学入試問題とPISA[05] 桜蔭の国語は推論がベース

0807 ☆今年の桜蔭も記述が中心でした。昨年と比較すると難易度は変わらないのですが、リテラシー能力のカテゴリーに少し変化がありました。OECD・PISAの指標に照合して昨年と今年の能力カテゴリーを比較してみました。

☆知識といっても漢字の書き取りですが、これは全く変化がありません。昨年は「情報の取り出し」「テキストの解釈」「熟考と評価」の問いのバランスがよかったのですが、今年は「テキストの解釈」に偏っています。

☆もっとも、「テキストの解釈」は文脈を推理しながらイメージや意味を生み出していくので、「情報の取り出し」のときに使う論理と「熟考と評価」の時に使うイマジネーションを少し使いますから、結果的にバランスは崩れていないということかもしれません。むしろはっきりしたことは、「テキストの解釈」という文脈から推理する思考スタイルが、桜蔭では重要だということです。「モザイクトレーニングから置き換えトレーニングへ」が桜蔭の読解リテラシーで要求されていることなのです。

☆ふだんから文章の要約をするとき、文章中の言葉をつなぎ合せるモザイクトレーニングではなく、さらに別の言葉で置き換えてみるトレーニングも必要だということですね。

0807_2 ☆さて、難易度の比較をレベル別に比較したグラフも作りました。「批判的思考力」を要するレベル5の問題が多くなっていますね。創造的思考を要するレベル6の問題とは、次のような今年の最終問題です。

「おじいちゃん」は、「ひとりの人間のこの世の役割とかは、人間にはわからん」という箇所もふくめて、「知らんということはつよいことや」と言っていますが、そこから、「おじいちゃん」がどのように考えているとわかりますか。200字以内で説明しなさい。

08_5☆この問題は周りの人たちの死に直面しながら、そこから逆に生きるということを考えるという問題で、たんに文章を解釈するだけではうまく解答が導き出せないないですね。「熟考と評価」という自分なりの考えやイメージを引き出しつつ、文章の意味を推理する必要があります。だからレベルは6なのです。昨年の合格者の平均点をPISAメソッドでシミュレーションすると、58.4%で、今年は60.9%になります。最初に述べたように、全体としての難易度に変化はありません。

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08中学入試問題とPISA[04] 開成の国語は論理と創造と②

☆今年の開成の国語の入試の結果が、同学園のサイトで公表されています。前回「OECD・PISAのレベル指標で合格者の平均をシミュレートすると、採点許容も考慮(漢字と記述の配点差が大きすぎるため)すると41.5点(85点満点)ぐらいでしょうか。昨年より難しかったということになるのでしょうか。」と書きました。

☆公表によると、合格者の平均点は46.3、受験生全体の平均は39.3だそうです。昨年の合格者の平均点は58.8、全体は50.2ですから、たしかに今年の方が難しかったようです。

☆「採点許容も考慮(漢字と記述の配点差が大きすぎるため)すると」と言いましたが、機械的にOECD・PISAでシミュレートすると合格者の平均は47.7なんですね。

☆OECD・PISAの基準と中学入試のレベルには、相当関係がありますね。ますます、PISAの枠組みを活用していきたいと思います。

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08中学入試問題とPISA[03] 開成の国語は論理と創造と

☆今年の開成の国語の入試問題で出題された素材文としてのテキストは、15、6年前まで長文1題構成と短い文章2題構成が2年おきぐらいに交代して出題されていたころの2題構成に戻ったという感じです。

☆特に今年のテキストは、昨年「ALWAYS続・三丁目の夕日」がブレイクしたからでしょうか、時代は大正時代を背景にした里見順の「わが胸の底のここには」の小説があつかわれているのですが、まだまだ昭和30年代にも残っていた、教師と悪戯生徒たちと正義感あふれる生徒の純粋な葛藤がテーマです。読んでいてあまりの懐かしさと互いに思いやる子弟愛が逆説的にすれ違うジレンマに思わず涙腺がゆるんでしまいました。受験生の中にそんな感受性を思わず作動させた子がいたらまずいなぁと思いましたが、そんなヤワな子は開成受験生にはいないかと思いなおしました。この小説は4000字弱でした。

☆もう1題は、永平寺のお坊さんのエッセイで、1600字ぐらいですから、合わせて5600字。ここ最近7000字ぐらいの文字数をテキストとして出題していたのに、何かカリキュラム変更でもあったのでしょうか。

08_3 ☆テキストの文字数は、15、6年前に戻ったのですが、問いの構造はここ数年の流れです。すべて記述と論述です。85点満点で、4つが漢字の書き取り、残りの7問が記述・論述です。OECD・PISAのカテゴリーで分けると、知識の割合が多くなりますが、配点が漢字と記述・論述では違うので、合格者の平均点をシミュレートするには、そこは考慮しなければなりません。

☆それにしても、

「・・・あなたが、人の人生や経験を知ってこのように頭を下げたい気持ちになったときのことを思い出して書いてください。どんな人に対して、どのような気持ちになったのか、説明しながら120字以内で書くこと。身近な人に限らず、本で読んだり人から聞いたりして知った人のことを題材にしてもかまいません。」

☆昨年の夏、開成のH先生は、独特の宗教教育を実践している一燈園という学校で、ほかの私学の先生と研究授業を行っています。新聞でも話題になりました。ハーバード大学のハワード・ガードナー教授も、創造性と知恵の両方を統合するTrusteeshipなるものの研究をしていますが、要は倫理なき先進性ではなく倫理ある創造性―ガードナー教授は“Good Creativity”とも言い代えていますが―、を入試の段階で発掘しよというのでしょうか。

08_4 ☆それはともかく、OECD・PISAのレベル指標で合格者の平均をシミュレートすると、採点許容も考慮(漢字と記述の配点差が大きすぎるため)すると41.5点(85点満点)ぐらいでしょうか。昨年より難しかったということになるのでしょうか。もうすぐ合格発表(いま13:04です)が行われますね。行われているのかもしれません。いずれにしても、開成の場合、試験結果が開成のサイトで発表されますから、あとで照らし合わせてみましょう。

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08中学入試問題とPISA[02] 麻布の国語の新しさ 

☆今年の麻布の国語の入試問題では、いつものように素材文としてのテキストは8000字程度の物語が出題されました。問いもおもに二人の少女の心情の変化を、レトリック(比喩などの表現)の解読を通して、丁寧に追っていき、心情の大きな変化に表われる少女たちの成長について考える問題でした。そして、その成長が具体的にどういう変化なのか、それからその変化のきかっけになるメディア=媒介項(テキストの中では鏡)のロールプレイは何なのかについて論述する問題でした。つまり、問いの構造自体は麻布の顔そのものだったわけです。

☆しかし、テキストが少し新しい感じがしましたね。安東みきえさんの著書「夕暮れのマグノリア」の中の一つの章「循環バス」が選択されていたわけですが、安東さんが断層世代であるので、アニメやマンガの影響もうけているのでしょう、たいへん読みやすい文章だったというのは、従来とは違うところかもしれません。いやいやここが危ないのです。ドラえもんのように、どこでもドアで、日常から非日常にワープする極端な場面がないので、逆に気づきにくい物語の構造になっています。

☆死喩と比喩が表裏一体になっているので、比喩が隠れているのが見えにくいのです。たとえば、循環バス自体が、いじめの悪循環の比喩なんですが、そう読み取らなくても、物語は読み進めてしまうのですね。あのテキストは、昨年の5月に出版されていますから、やはり毎年5月前後に出版される本を活用する可能性があるのです。つまり表現やテーマが時代に沿うものが出題され続けるというのは、麻布の1つの見識ですね。この見識はまさに不易流行。麻布が私学の系譜のルーツでありながら、常に新しいのにはそういうワケがあるのでしょう。

08 ☆さて、PISAの指標に従って分析した結果を見てみましょう。PISAの読解リテラシーの思考のレベルは5で止まっています。学習指導要領は3で止まりますから、国際標準と合わないわけですが、麻布の国語の問題はすでにPISAを超えてしまっています。これは前回ご紹介した雙葉も同様です。

08_2 ☆また、情報の取り出しのような問題は少なく、文脈や物語の構造から推理していく「テキストの解釈」の問いが圧倒的に多いわけです。そして、テキストから離れてテーマの背景を創造的に思考し論述する「熟考と評価」の問題が圧巻なのです。PISAの指標で合格者の平均点を推測してみると、33.4点(60点満点)ぐらいになります。もちろん、実際のデータではなく、あくまで予測値です。

Azabusoci ☆それにしても社会の最終問題は、いつもながら脱帽ですね。今の立法府である国会の時限立法などの議論なき議論にもの申す問いかけですね。国会議員のみなさんに解いてもらいたい問題です。PISAの指標で言えば、この社会の問いも、レベル6で、カテゴリーは「熟考と評価」になります。

Kenji *PISAの指標や基準については、国際教育研究家岡部憲治さんの「世界標準の読解力 OECD・PISAメソッドに学べ」がよくできています。白日社から出版されていますが、編集者鳴瀬さんのお話では、大学の先生が購入されているケースが多くなってきたということです。あるエクセレントスクールの私立学校も10冊いっぺんに購入されたようです。全国学力テストや公立中高一貫校の適性検査の作成にも役立ちます。岡部さんも私もいくつかの自治体の学力テストや適性検査に直接間接かかわってきたので、無責任なノウハウ書ではありません。「私立学校の入試問題の分析」、「公立中高一貫校の適性検査の分析」、「私立学校の学習プログラム編集・運営」、「国立中学の学習プログラム編集・運営」、「自治体のカリキュラム編集支援」、「センター模試や私立中学の学力診断テストの編集・評価分析」という現場経験から生まれ出た本です。テストの作成者の意図どころか、仕掛けを見破る奥義でもあります^^)。

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08中学入試問題とPISA[01] 雙葉の傾向完全に変わる?

☆昨年の雙葉の国語の入試問題から詩が消えましたが、今年もそうでした。どうやら詩の雙葉ではなくなったようです。しかし、基本線はかわっていません。素材文として詩は出題していませんが、比喩が表している内容を記述するレトリック問題はたくさん出題されています。

☆独立した知識はなくなりましたが、文脈から推測する知識問題もたくさん出題されています。しかし、次のような知識から文脈を作り出す、非連続の連続性をつくる問題も出題されています。

◆次の各グループのカタカナを漢字に直し、それを用いて短文を作りなさい。

①フンパツ カンゲキ ソフ

②ハイユウ ゼッサン チョメイ

③ハソン ユダン シャザイ

④ロウホウ カクテイ コウホ

08 ☆OECD/PISAの読解リテラシーのカテゴリーで雙葉の国語の問題を分析すると、テキストの解釈の問題が50%です。文章の中に直接は書かれていないけれど、文脈から推測して解答を記述する問題が多いわけです。「映像と比べて、本を読むことの魅力はどこにあると思いますか。100字以上150字以内で述べなさい」というような完全に自分の文脈を作り出す問題も多いですね。これはカテゴリーでいうと「熟考・評価」になります。

08_2 ☆各カテゴリーのレベルもハードルの高い問題が多くなっていますから、合格者の全体の平均正答率は55%ぐらいでしょう。差がつかないので、他教科の得点差が決め手になっている可能性があります。学校当局は今までとは違う資質の生徒を求めているのでしょうか。雙葉学内で、何が起きているのでしょう。

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入試問題は学校の顔[05]~鴎友学園女子

入試問題は学校の顔[04]~かえつ有明のつづきです。前々から気になっていた鴎友女子学園の国語の問題。解き味がほかの学校と比較してかなり違うんですね。長文で記述式がほとんどですから設問が少ないわけです。というと、麻布、開成、武蔵、桜蔭の国語の入試問題スタイルの仲間にはいるわけです。しかし、どこか違うのです。もちろん、もっとも多い模擬試験に近いオーソドックスなスタイルとは全く違います。

★細部をきちんと読んでいくのはあたりまえだけれど、設問がそこを細かくついてくることはしませんね。かといって全体の構造をしっかり考えて解答するというわけでもないのです。テーマがわかるとスーッと了解できる、そんな不思議なタイプですね。

★2007年の物語は、サンタクロースの存在をどのようにとらえるようになるかで、成長の段階が急に変わるというストーリーのものが出題されています。サンタクロースの存在認識が、プレゼントをもらう側になるのか与える側になるのか、その境界線をめぐる話なんですが、これはもらう側とは人に愛される幼年期を象徴し、与える側は人を愛する立場に立つ大人に成長する象徴なんですね。

★論説文は、経済発展と自然保護の矛盾をどう考えるかというのがテーマです。両者をべつものとしてとらえるのではなく、自然保護の延長線上に経済発展を考えていく視点がポイントですが、かなり高い見識を持っていなければ、実際には解答に窮するでしょう。

07 ★両方とも鴎友学園女子の教育プログラムの重要なテーマです。まさに入試問題は学校の顔です。ところで、いつものようにOESD/PISAの読解リテラシーのモノサシで分析してみました。やはり「情報の取り出し」「テキストの解釈」「熟考と評価」のバランスはよく考えられています。

07_2 ★一方、レベル分析の結果は、世界標準レベルで、世界標準のレベル5を超えるレベル6までのものは出題されていませんでした。これが、一般の入試問題に比べ、格が違うなと感じる一方で、麻布や桜蔭が出題するような問題とも違うなと感じる理由なのだと思います。中学入試の段階では、世界標準の最高レベルの出題で十分でしょう。このモノサシで合格者の全体平均正答率をシミュレーションすると60.8%になります。実際の結果ともそれほどズレはないはずですから、やはり、よく練られた最適の問題ですね。[本間 勇人 Gate of Honma Note

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入試問題は学校の顔[04]~かえつ有明

入試問題は学校の顔[03]~栄光学園のつづきです。校舎移転、共学校化、校名変更、教育改革など大きな学園のパラダイム転換を推し進めて2年目を過ぎようとしているかえつ有明。その人気ぶりは、ここで確認するまでもありませんね。

★しかし、このかえつ有明の変貌ぶりは、とどまるところを知りません。大変革の中心は今まで「サイエンス」だったのですが、この新教育プログラム自体、さらに大きく変わろうとしています。変わるというより加速度的に広がっていると言った方が適切かもしれません。

★その広がりとは、今まで国語と理科との連携がベースだったのですが、さらに英語や社会とも連携しようと企画しているのです。教科間の知の連携と教師どうしのチームプレイが広がっているのですね。

★一方英語もIB(インターナショナルバカロレア)の世界標準のプログラムのアイディアを導入しようとしています。世界標準と言った場合、かえつ有明では、まずは教科横断的なプログラムと教師どうしの連携のことを示唆しているようです。IB自体、教科横断的なマルチインテリジェンスの方法論をベースにしています。

★さて、「連携」が「サイエンス」と「英語」の共通語であり、それが示唆するのは「世界標準」というのが、かえつ有明の新たな戦略のようです。わくわくしますね。

★そうなってくると、しかし入試問題に多少の変更が出てくるかもしれません。というのも入試問題は学校の顔ですから、入試問題自体「世界標準」を標榜するような問題が作成される可能性があるからです。

07 ★今春2月1日のかえつ有明の難進の国語の問題を分析してみました。「読解リテラシー」の3つの能力である「情報の取り出し」「テキストの解釈」「熟考と評価」のうち3つ目の自分で意見を考えたり、批判的な思考を駆使する問題は出題されていませんでした。「世界標準」を標榜した以上は、この能力をテストしないわけにはいかないでしょう。もちろん、入学してから鍛えますということでしょうし、実際にそうしていますから問題はないのですが、入学してくる前から脳を全体的に働かせておいたほうが、入学後の伸びに差がつきます。「世界標準の読解リテラシー」について、かえつ有明の国語科の先生がどのような回答をだすのか来春が楽しみです。

07_2 ★レベルに関しては、すでに「世界標準」です。レベル4、レベル5という難問も20%弱出題しています。合格者の全体正答率は70%近くになるはずですが、レベル4とレベル5の問題が極端にできなかったので、もう少し正答率は低くなっていました。現状では、レベル4とレベル5の問題を避けてほかの問題に集中した方が受かりやすいというのが本当のところです。

★しかし、これでは入学してから「世界標準」の授業に臨むときに相当苦労します。入学前の働きかけが、かえつ有明から準備される必要がありますね。パラダイム転換をして、それを実現可能にするエネルギーは生半なものではありません。かえつ有明の先生方の気概と知性と機知に富んだセンスを見定めに、ぜひ学校説明会に参加しましょう。[本間 勇人 Gate of Honma Note

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入試問題は学校の顔[03]~栄光学園

入試問題は学校の顔[02]~桜蔭中のつづきです。今春の栄光学園の国語の入試問題を、「読解リテラシー」の切り口で分析しました。一般に思われているように難問はありません。世界標準内にきちんと収まります。栄光学園らしいですね。学習指導要領の制限にのっとって、知識も出すし、世界標準を超えるような高度な問題もださない。でも選抜することができる、つまり日頃丁寧な学びをしていないと差がつく問題を出題しています。

07 ★さて、「読解リテラシー」の3つの能力のバランスですが、漢字の書き取りなど15題だすなど、知識問題の占める割合が多くなっているので、偏りがあるようにみえますが。「情報の取り出し」「テキストの解釈」「熟考と評価」だけ抜き出せば、そのバランスはよいと思います。

★桜蔭と同じように「読解リテラシー」の能力をみる問題の総数が少ないですから、本質的な問題が出されていると理解していよいでしょう。科学的な見方、特に科学的考察はコペルニクス的な転回を常に含んでいるということを押さえておかないとテーマそのものが難しいでしょう。文章はそれほど難しくないのですが、考え方は簡単ではないのです。

07_2 ★物語では、人間の気持ちのパラドックス、純粋なものの表現について何度か考えたことがないとちょっと難しいかもしれません。読書量というより考える時間が大事ですね。とはいえ、レベルは2から5まで。きちんと論理的に考える習慣が決め手になります。もちろんパラドックスも論理的思考の一部です。

★知識問題が60%以上占めていますから、合格者の平均正答率は65%から70%の間なのですが、差がつくのは、考える問題。もっとも、意外と漢字が書けないので、ここはここでしたたかにトレーニングを積んでいる受験生に有利なわけですが・・・。思い切って漢字の問題を出題しないと、考える質にこだわった生徒が進学すると思うのですが。[本間 勇人 Gate of Honma Note

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入試問題は学校の顔[02]~桜蔭中

入試問題は学校の顔~東海中のつづきです。「世界標準の読解リテラシー」にもとづいて、2007年の桜蔭中の国語の入試問題を分析しましょう。

 *参照→「世界標準の読解力 OECD/PISAメソッド学べ」所収の岡部さんのオリジナル習熟度レベルの表(86・87ページ)

★2007年に実施された桜蔭の国語の問題は、すべて記述式で60字から250字まで多様な記述の問題が出題されています。それを聞いただけでも難しそうでしょう。実際難しいのですが、合格最低点や平均点など非公表です。しかし、だいたいの目安は算出できます。「席あ標準の読解リテラシー」の「習熟度レベル」でシミュレーションすると、(すべての受験生が受けたとしたら)その平均正答率は、58.4%になりますから、合格者の平均正答率はもう少し上がるでしょうね。

07 ★まず読解リテラシーの能力の分析です。「知識問題」は4つで、あとはすべて読解リテラシーの問題で、解答形式はすべて記述式。さて、3つの能力「情報の取り出し」「テキストの解釈」「熟考と評価」ですが、バランスよく出題されています。つまり桜蔭中の入試問題を学びの素材とすると、「世界標準の読解リテラシー」が身につくわけです。

07_2 ★レベルですが、漢字を除いて、すべてレベル3以上です。「テキストの解釈」と「熟考と評価」ではレベル6の問題が1問ずつ出題されています。「テキストの解釈」のレベル6の問題というのは「細部の情報の背景全体の流れを理解したり、その流れに新しい情報を付け加えることができる」能力を必要とします。「熟考と評価」のレベル6の問題というは「批判的な評価、仮説、特殊な知識を使って、新しい考え方や見方を組み立て、かつ検証できる」能力を必要とします。

★この2つのレベル6の問題は、いずれも5500字程度の物語に関する問題です。しかも、この物語の問題は、この2つの問いしか出題されていないのですから、いかに本質的問題であるかということを推察するのは難しくないでしょう。これははっきりいって、キャラとキャラクターの自己分裂を乗り越えていく成長物語ですが、なかなか深刻な物語です。純粋で無欲な人間の根源的な存在に気づくと世間からは気にかけられなくなる、存在を無視されるという解釈も成り立ってしまう物語です。まっ、深読みなのかと思っていたら、桜蔭当局が作成した解答も、そこを避けていませんから、おもしろいですね。

★愛とか人間の存在とかを考える力は、小学生には必要がないはずがないのですね。というより小さな命をさずかったときから、周りも本人も、それが最も重要です。小学生にそんなことを考えることを要求するのは間違っていると感じたとしたら、そこは議論の余地ありですね。

★それからレベル6というのはOECD/PISAでは設定されていません。PISAで設定しているのはレベル5までです。桜蔭中の問題は世界標準を超えたところまで要求しているのです。日本の学力が低下したとか議論をする前に、もっと日本の教育事情をリサーチすべきですね、学識者たちは。科学的探究心なき教育関係者の言説は、大いに問題ありです。[本間 勇人 Gate of Honma Note

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入試問題は学校の顔~東海中

★入試問題は学校の顔とよく言われます。その学校がどのような教育プログラムを持っているのか、入試問題にはその質が反映してしまいます。この間名古屋のセンター模試会場で、東海中とほかの学校の国語の問題を比較してみました。やはり大きな教育の質の違いが明らかになりました。入試問題は、その学校の先生の実力があらわれてしまうものです。

★さて、ではどうやって比較することができるのか。それはOECD/PISAの読解リテラシーというグローバルスタンダード(世界標準)という尺度で比較できます。この研究の成果を私の友人の岡部憲治さんが本「世界標準の読解力」(白日社2007年9月)として出版しました。OECD/PISAの問題と中学入試問題を比較し、十分に中学入試が世界標準の問題であることと同時に世界標準を超えているということを証明した本です。また岡部式「かんがえ型」を編み出し、読解リテラシーや論文メソッドを鍛える方法論も発表しています。

★岡部さんの本に基づき、中学入試問題を分析していくメリットは、すべてのテストを同じ尺度で分析できるので、質の比較ができることと、その学校の教育が世界標準に比較してどのくらいのレベルかということまでわかるという点です。

★学校選択をする際に、世界標準クラスあるいはそれ以上である学校を選ぶ方が望ましいのではないでしょうか。

★さて、OECD/PISAの読解リテラシーは3つの能力と各能力を5つのレベルに分けています。読解リテラシーの能力領域は3×5で15領域あるということになります。岡部さんは、中学入試問題をていねいに分析していって、15の領域を超える問題が出題されていることを確認しました。ですから岡部さんのオリジナルの読解リテラシーの能力領域は18個ということになります。

*参照→岡部さんのオリジナル習熟度レベルの表(前掲書86・87ページ)

★実際の入試問題はOECD/PISAが出題していない知識確認の問題があります。ですから、これをレベル0として追加しないと入試問題全体は分析できません。岡部さんのオリジナル習熟度レベルの表(前掲書86・87ページ)を多少修正して、今後いろいろな学校の国語の中学入試問題を分析していきたいと思います。この習熟度レベルの表の見方や実際のOECD/PISAの読解リテラシーの問題に関心ある方は、岡部さんの本やサイトをご覧ください。いずれサイトで、岡部さん本人がもっとおもしろい分析をしていくことと期待しています。

07 ★まずは今年の東海中の国語の問題です。「情報の取り出し」「解釈」「熟考と評価」という3つの読解リテラシーの能力をバランスよく出題しています。この能力は入試問題のためにあるわけではありません。さまざまな情報(文章だけではなく写真やグラフやデータもテキスト情報)を読解する際のリテラシーの能力です。

07_2 ★東海中の読解リテラシーに対する考え方が、世界に通用するものであることがわかります。また、レベルを分析するとレベル5までの問題がありますから、中学入試の段階で、すでに世界標準に達していることが望まれているわけです。なるほど愛知県でナンバー1の私立学校ですね。このレベル表に基づいて、ちょっとしたシミュレーションをすると、合格者の平均正答率は68.2%という結果が出ましたが、実際にはどうでしょうか。いずれ確かめてみましょう。それはともかく、世界標準を超える読解リテラシーの問題は出題されていません。これでは困ります。

★というのも受験生は過去問を基準に学びます。今のままでは世界標準の枠内の学びで終わるでしょう。これでは国際社会で活躍する才能があっても、芽は摘まれてしまいます。東海中の使命を考慮すると、もっと世界に目を向けるべきではないでしょうか。[本間 勇人 Gate of Honma Note

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